ホイットマンを読まなければならない

批評と臨床 (河出文庫 ト 6-10)

批評と臨床 (河出文庫 ト 6-10)

ジル・ドゥルーズの「ホイットマン」(in 『批評と臨床』)を読んで、是非ともホイットマンを読まなければならないなと思った。
このテクストの最後の方からドゥルーズの言葉を抜いてみる;


(前略)ホイットマンとはおそらく、存在し得る最も色彩豊かな文学の一つを生み出した人である。絶えず刷新され発明される対位法と答唱の数々は、さまざまな音の関係あるいは鳥たちの歌を構成しており、ホイットマンはそれを見事に描き出している。〈自然〉とは形式ではない。そうではなく、それは関係づけのプロセスなのだ。それはポリフォニーを発明する。それは全体性ではなくて、集会、「枢機卿会議」、「総会」なのだ。〈自然〉は、片利共生性や懇親性のあらゆるプロセスと分かちがたく、そのプロセスとはあらかじめ存在する所与ではなく、動いてやまぬ諸関係の織物を作り出すような仕方で、たがいに異質な生きものたちのあいだで練り上げられるものなのであり、そのプロセスは、ある部分のメロディが別の部分のメロディの内部にモティーフとして介入するようにするのである(蜜蜂と花)。諸関係とは、一つの〈全体〉に内在するものなのではなく、むしろ、全体のほうこそがこれこれの瞬間に外在的な諸関係から生ずるのであり、それらの関係とともに変化してゆくのである。いたるところで、対位法の諸関係が進化を発明し、かつ条件づけるのだ。(p.128)

〈自然〉に対する人間の諸関係においても事は同様である。ホイットマンは、樫の若木に対してある体育学的関係を、体と体のぶつかり合いを確立する。すなわち、彼はそれらの木の中に溶け込むのでも、それらと混じり合ってしまうのでもない。そうではなく彼は、彼らのあいだに、つまり人間の身体と木のあいだに、二つの方向に向けて何かが通過するようにし、身体が「透明な樹液と弾力性のある繊維とを少しばかり」受け取り、逆に木の側では、わずかな意識を受け取るようにするのである(「たぶんわれわれは交換をしているのだ」)。最後に、人間に対する人間の関係においても事は同様である。そこでもまた、人間は他者との関係を発明しなければならない。「同志」というのはホイットマンの偉大な言葉であり、それは、状況の総体にしたがってではなく、関連する断片の諸特徴や感情的諸状態や「内面」に応じて、最も高度な人間的関係を指し示すためのものである(たとえば、病院で、孤独な瀕死者の一人ひとりと同志の関係を打ち建てること……)。こうして、可変的な諸関係のコレクションが織り上げられるわけであり、それは何かある全体と混同されることはなく、これこれの状況の中で人間が獲得することができる唯一の全体を産出するのである。〈同志〉とは〈外〉との出会いを、野外での、「大いなる道」の上での魂たちの歩みを含意する、このような可変性のことだ。同志の関係が、政治的で国家的な性質を身に帯びつつ、最大の広がりと密度を手にし、雄々しくかつ民衆的な愛の数々に到達していると見なされるのは、アメリカとともにである。それは、包括主義だの全体主義だのではない。そうではなく、ホイットマンの言うように、「〈連合主義〉」なのだ。〈デモクラシー〉でさえ、〈芸術〉でさえ、〈自然〉との関係においてしか、一つの全体を形成することはない(野外、光、さまざまな色彩、いろいろな音、夜……)。さもなければ、芸術は病理に陥り、デモクラシーは欺瞞に陥ってしまうのである。
同志たちの社会、それはアメリカの革命的な夢であり、ホイットマンはその夢に強力に貢献した。これは、ソヴィエト社会のそれよりはるかに以前に、失望に終わり、裏切られた夢である。だが、それは同時に、あの二つのアスペクトのもとにおける、アメリカ文学の現実でもある。すなわち、断片的なるものの自発性あるいは生得的な感情。そのつど獲得され創造される生きた諸関係についての省察。自発的な断片の数々――それこそが、それを通して、あるいはその隔たりにおいて、〈自然〉と〈歴史〉についての熟慮された大いなる視覚と聴覚に人が到達する要素を構成しているおである。(pp.128-130)
「 諸関係とは、一つの〈全体〉に内在するものなのではなく、むしろ、全体のほうこそがこれこれの瞬間に外在的な諸関係から生ずるのであり、それらの関係とともに変化してゆくのである」――ここでは、アレントの『革命について』における米国革命についての省察を想起しないわけにはいかない。
On Revolution (Classic, 20th-Century, Penguin)

On Revolution (Classic, 20th-Century, Penguin)

さて、ホイットマンだが、『草の葉』のみならずその日記も岩波文庫から出ているんだね。
ホイットマンを巡って;


Wikipedia http://en.wikipedia.org/wiki/Walt_Whitman
Ed Folsom and Kenneth M. Price (eds.) The Walt Whitman Archive http://www.whitmanarchive.org/
Peter Armenti (ed.) Walt Whitman: Online Resources at the Library of Congress http://www.loc.gov/rr/program/bib/whitman/