イヴェントの記録から離れて？ - Living, Loving, Thinking, Again

「TVがイヴェントを自作自演的につくりだして、勝手に盛り上がりながら、その盛り上がりを万人の盛り上がりとして「ごり押し」するという傾向は日本に限らず1980年代以降顕著になってきたように思う」と書いたのだが*1、そのときに頭の片隅にあったのは「ザ・ローリングストーンズ」と題した「ミズラモグラ」さんのエントリーだった*2。そこでは、ローリング・ストーンズのライヴを記録したハル・アシュビーの『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』、ザ･バンドの解散コンサートのマーティン・スコセッシによるドキュメント『ラスト･ワルツ』、ニール･ヤングを撮ったジム・ジャームッシュの『イヤー・オヴ・ザ・ホース』などが言及されている。因みに、『イヤー・オヴ・ザ・ホース』は観ていない。ところで、ロック映画の古典というと、『真夏の夜のジャズ』*3、『モンタレー･ポップ･フェスティヴァウル』、あの『ウッドストック』*4、オルタモント事件を記録した『ギミー・シェルター』、『ワイト島』*5、『バングラデシュのコンサート』にしても、重要だとされるイヴェントがあって、そのイヴェントを記録し、編集し、１本の映画としてまとめられ・上映されたものだ。そういうビッグ･イヴェントを記録するという映画は『ラスト・ワルツ』を最後につくられていない。その後、あの『ライヴ・エイド』*6を初めとして、ロックにおけるビッグ･イヴェントは幾つもあった筈なのに。多分『ライヴ・エイド』を境に、〈ビッグ･イヴェント〉はTV、さらにはインターネットによる生中継を前提として構築されるようになったのではないか。音楽に限らず〈ビッグ･イヴェント〉の記録映像を事後的に作品として纏めて作品として後世に遺すということが映画の任務としてかつては期待されていたといえるだろう。そのようにして、1935年のナチス大会や伯林オリンピックは『意志の勝利』、『民族の祭典』、『美の祭典』というレニ・リーフェンシュタールの作品として後世に遺された。東京オリンピックも市川崑の映像作品として残った*7。ほかの〈ビッグ･イヴェント〉ということだと、大阪万博の記録映画を映画館に観に行った記憶はある。ナレーターは石坂浩二だった。観てはいないけれど、昭和天皇がヨーロッパを訪問したときも記録映画が作られ、ポルノ映画ややくざ映画と同時上映するなというお達しがあったという。オリンピックでいうと、ミュンヘン・オリンピックの記録映画が作られたということは知っているけれど、その後どうなったのか。~~北京オリンピックの記録映画はない~~。また、中国共産党や日本の自民党や民主党の党大会が一流の映画作家によって記録映画に仕立てられるというのもありえない話だし、上海万博の記録映画もない。しかし、それはドキュメンタリー映画というジャンルにとっては束縛からの解放でもあるのだろう。