Chairman!

承前*1

中国の文化大革命の日本での余波のひとつとして、幾人かの〈ミニ毛沢東〉を出現させたことがある。昔毛沢東主義の左翼党派の新聞を開くと、その党派の指導者たる何とか議長の言葉が屡々載っていた。それらの言葉の登場の仕方というのは、何とか議長の演説とか論文を掲載するというものではなく、一般の記事の中に何とか議長の談話が引用・挿入されるというものだった。そういうのを読んだとき、神秘的! と思ったものだ。
さて、偶々『父さんの日記』という所謂〈小沢信者〉のblogを読んでしまった*2。そこには、〈小沢信者〉の顧問的存在(?)である平野貞夫氏の文章が引用されている;


 3月29日(火)午前、私の友人である板橋区役所ホタル飼育施設の安倍宣男理学博士から電話があった。ホタルを飼育するために、汚染された水質の改善技術で有名な人物である。

 「放射性ヨウ素放射性セシウムの数値が高くなる水道水を、70%削減できる発明ができた。蛍の飼育を参考にして、ナノ銀坦持石と骨炭などの組み合わせだ。これを小沢先生の名で世の中に知らせて欲しい」という話だった。平成19年6月、民主党代表のとき、小沢氏がホタル飼育施設を訪問して以来の交友である。

 早速小沢氏に伝えると、「大災害の中で、国民のためになるものを、政治家のパフォーマンスに使うものではない。平野さんから実務的に専門の関係機関に伝え、しかるべき機関にオーソライズしてもらい、国民のために役立つようにしてやって欲しい」ということであった。こんな場合、菅首相ならふたつ返事で飛びついてきたはずである。パフォーマンスが政治だ、と思っている政治家が圧倒的に多いわが国で、小沢氏の見識はさすがであると、改めての思いである。

 この件は、早速友人の都庁OB職員を通じて、水道局として取り組んでくれることになった。安倍博士の貴重な発明が、放射能汚染におののく国民のために役立つことをひたすら期待している。

ここから読み取れるのはとにかく小沢一郎はえらいということであって、肝心要のこと、この新「発明」が具体的にどういうメカニズムを持っているのかということはわからない。読む者はこれがほんとうに凄いのかそれともトンデモに近いのかを判断することはできない。ただ、この文章の内容ではなく形式から、上述の何とか議長の談話を想起してしまった。
また、二見伸明というこれまた〈重鎮〉の方の文章も引用されている;

地震直後の13日夜、私は小沢事務所と情報交換しました。
「すぐにでも岩手に行きたいが、救援、復旧活動に邪魔になることになりかねないので、行くわけにはいかない」「(二見)岩手入りした方がパフォーマンスとしてはプラスになるのではないか」「一人でも助かる人が多いほうが大事なので、パフォーマンスという発想はない。それよりも、菅首相原発対策はおかしい。災害対策の基本は『最悪の事態を想定し、最善の対策を講ずること』だ。菅さんは避難地域を3km、10km、20kmと後追いして拡大しているが、このやり方は不安を助長するだけで、間違っている。最悪の事態を考えて、住民の生命を守る、住民の不安を抑えるために、50km、80kmを最初から避難地域と設定し、住民に正しい情報を提供し、その上で、最善の努力をして、避難地域が40kmに、30kmになったということが大事なのではないか」というのです。
特に後半の内容の是非はともかくとして。小沢一郎氏の消息が一時途絶えたことに関しては、これが小沢側の回答であるようだ。そういちいちいわれなくても、揶揄することなく只管主席の大御心を推察せよというのが〈信者〉的態度か。