
- 作者: エドマンド・ウィルソン,土岐恒二
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2000/01
- メディア: 文庫
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文学の流派としての浪漫主義(Romanticism)というのは正直言ってあまりよくわからなかった。浪漫主義といっても、英国、仏蘭西、独逸とあるわけだが、それらを全部ひっくるめて統一した像を結ぶのが難しかったのだ。しかし、エドマンド・ウィルソン『アクセルの城』第1章「象徴主義」における歴史的説明は明快だった。「古典主義」(合理主義)に対する反発、その客観主義に対する作家(詩人)の主観性(感受性や意志)の強調が浪漫主義。浪漫主義の「感傷性」・「散漫」に対するバックラッシュ(客観性の恢復が「高踏派」または「自然主義」。「自然主義」に対する反発と浪漫主義のラディカル化が「象徴主義」ということになる。勿論、ウィルソンは「(前略)こうした運動と対抗運動とが、あたかも十八世紀の理性が十九世紀のロマン主義によって掃蕩され、以後ロマン主義が陣地を維持し、それがやがて自然主義によって監禁され、つづいてマラルメとランボーが自然主義を爆破した、といったように、定期的に、驍将によく統制されて、必然的に交替するものだというような印象を与えることは警戒しなければならない」(pp.18-19)と但し書きをしているはいるが。なお、ウィルソンは英国、仏蘭西、米国、それからノルウェーのイプセンには言及しているが、独逸文学の動きはまったく取り上げていない。