幸福の黄色い……

『朝日』の記事;


「会うと幸せ」黄色い新幹線 線路点検、ダイヤは非公開(1/2ページ)

2010年9月3日16時50分


東京―博多間を黄色い新幹線が走っている。運行ダイヤが公表されずめったにお目にかかれないことから、「出会うと幸せになる」ともうわさされる。最近は目撃情報を速報するインターネットの掲示板が盛況で、おもちゃの売れ行きも急増している。その正体とは。

 平日午前。広島駅のホームに黄色い7両編成の新幹線が滑り込むと、会社員や子ども連れが撮影を始めた。

 線路や電線を点検する専用車。お医者さんのような役割から「ドクターイエロー」と呼ばれる。黄色く塗られているのは、乗客が誤って乗らないようにとの配慮だ。約10日に1回、東京―博多を往復。普通の新幹線とほぼ同様に最高時速270キロで走る。

 車内は大型コンピューターなどが並び、SF映画に出る研究所のようだ。点検項目は約150に及び、7、8人が管制室のパソコンでグラフや数値を確認する。「少人数で済むのは最新のレーザーを使っているからです」と、JR西新幹線管理本部の中川順司さん(29)は語る。

 1秒間に1500回の速さでレーザーを電線や線路にあてる。高速で揺れながら走っていても、摩耗の程度や上下左右のゆがみなど数ミリ単位の異状を見つける高性能ぶりだ。

 電線から車体に電力を取り込むパンタグラフの状態を目で確認する小窓も天井付近にある。のぞくと、電線がこすれて火花を散らしているのが見える。ヘッドライトの真下にも前方の線路が見えるのぞき窓がある。いずれも小型カメラが付き、管制室のモニターに映像を送る。

 初代ドクターイエロー東海道新幹線が開業する2年前の1962年に生まれた。団子鼻の初代0系新幹線がベースで、電線など電気設備の点検しかできなかったが、74年に電線と線路の点検を一度にできる第2世代が登場した。
http://www.asahi.com/national/update/0903/OSK201009030081.html

 95年1月の阪神大震災の際、復旧工事を終えた区間を真っ先に走り、営業再開へ向けた最終的な判断を出すための点検をした。01年以降は第3世代でJR東海と西日本が1編成ずつ所有している。700系がベースで、異状の種類や場所を短時間で特定できるようになった。

 実際に線路や電線のゆがみを見つけるのは月に1回程度だ。目立たない仕事だが、黙々と目を光らせ、東海道・山陽新幹線の開業以来の衝突・脱線ゼロ、乗客の死傷事故ゼロに貢献している。中川さんは「駅などで見かけたら、縁の下の力持ちをねぎらってやってほしい」と話す。

■目撃情報をネット速報

 「黄色い新幹線に出会うと幸せになると聞きました。いつ、どこで見ることができますか?」。インターネットの鉄道関連サイトでは、そんな質問が目立つ。目撃情報を集めた掲示板では、駅や鉄橋を何時に通過したか、いつもと比べて何分早いか遅いかなどの速報が、多い時には1日約20件寄せられる。運行ダイヤを推測して披露している熱心なファンもいる。

 タカラトミー鉄道模型プラレールの新幹線12種類のうち、96年発売のドクターイエローの売り上げは、新型のN700系や戦闘機のような先頭車両が人気の500系などに肩を並べ、上位に食い込む。同社広報部は「実車が珍しいだけに、いつでも見ることができる模型に人気が集まるのでしょうか」という。

 日本マクドナルドもこの夏、「ハッピーセット」のおまけにプラレールを付けた。N700系新幹線やSLとともに、ドクターイエローもラインナップに。どの車種が当たるかは運任せ。同社の広報担当は「手に入れるために何度も店に足を運んでくれたお客様が多かった。うわさの人気ぶりを実感しました」。

 都市文化論が専門の評論家河内厚郎さんは「長引く不況の中、若者たちは花形を目指すのではなく、たとえ地味な仕事でも究めて、周りから尊敬されるような生き方を求めるようになってきた。人知れず黙々と働くドクターイエローは、まさに一つの理想型として受けているのかもしれない」と話している。(小河雅臣)
http://www.asahi.com/national/update/0903/OSK201009030081_01.html

最後の河内厚郎のコメントには笑ってしまった。馬鹿を5回!
先ず考えなければいけないのは、〈黄色〉の記号論(意味論)だろう。『幸福の黄色いハンカチ』とか。或いは意味としては逆だが、イエロー・センター・ラインやイエロー・カード。
幸福の黄色いハンカチ [DVD]

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色のことは措いておいて、問題は日常生活において稀(滅多に遭遇しない)且つ現れ方がランダム(何時・何処で遭遇するかわからない)な出来事、つまりアノマリーがどのように解釈されるのかということだろう。それらは吉祥或いは逆に不吉として解釈される。茶柱が立つといいことがあるとか。「黄色い新幹線」もそういうものだ。そういえば、1970年代に〈スーパーカー〉というのがブームになって、小学生たちはフェラーリランボルギーニの写真とかスーパーカー消しゴムとかをコレクションしていた。斎藤次郎*1によれば、その頃小学生たちの間でスーパーカー占いというのが流行っていたともいう(『子どもを見直す』)。実際にスーパーカーが街を走っているのを見るといいことがあるとか。つまり、出現頻度の低さとランダムさによるunusualな感覚のなせるわざなのだ。「ダイヤは非公開」というJRは賢明だ。「公開」されてランダムさがなくなったら、ありがたみが半減してしまうからだ。これを非科学的だの迷信だの論うのは味気ないし、(河内厚郎のように)これをネタに道徳的お説教を捏造してしまうのはもっと馬鹿らしい。ところで、「車内は大型コンピューターなどが並び、SF映画に出る研究所のようだ」という表現。小河雅臣って何歳なのよ?