オーソドックスではあるが

時事通信の記事;


59歳女性を殺害容疑=逮捕の姉弟「除霊のため」―京都府


2010年7月28日(水)13時53分配信 時事通信


 28日午前2時半ごろ、京都市上京区三町目のマンションから「姉にとりついた霊を追い出すため殴ったりけったりした」と119番があった。府警上京署員らが駆け付けたところ、この部屋に住む女性が倒れており、病院で死亡が確認された。同署は殺人容疑で、現場にいた女性の姉で無職の金栄子容疑者(62)=同市右京区太秦辻ケ本町=と、弟の無職幸吉容疑者(55)=同市北区衣笠開キ町=を逮捕した。
 逮捕容疑は28日午前0時ごろから同2時半ごろの間、共謀して無職信子さん(59)を殴り、死なせた疑い。
 同署によると、2人は「(信子さんが)3日前から訳の分からないことをしゃべり出した。自分たちは霊感が強いので、2人で相談して霊を追い出すためにマッサージを始めたが、霊が出ていかないので殴った」と話しているという。
 2人は「除霊方法をテレビで見た」とも話しており、同署が詳しい動機を調べている。 
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jiji-28X436/1.htm

ひっぱたいて「霊を追い出す」というのは煙で燻し出すというのとともにオーソドックスといえばオーソドックス。その一方で、「除霊方法をテレビで見た」ということだが、肝心なところで〈霊の文化〉から切断されたところで起きた事件であるともいえる。抽象的・一般的な「霊」というのはなく、あくまでも狐だとか狸だとか、或いはどこそこの神とか、そういう具体的な「霊」として現れる筈なのだ。〈狐憑き〉が文化に埋め込まれている場所では「霊」に憑かれた人はこんこんと鳴き出す。間違ってもにゃあにゃあとは言わない。また、神道における審神制度*1において、「除霊」というのは審神師と(生ける依り代という意味での)神主に移された「霊」との知的ディベートの様相を呈する。つまり審神師が「霊」を論破することで「除霊」が完了するわけだ。何だか、こういった制度や文化がすっぽり抜け落ちて、「霊」ということが独り歩きしているなという感想を持った。
さて、


Lizzy Davies “French couple held after eight newborn babies' corpses found buried in village” http://www.guardian.co.uk/world/2010/jul/28/french-couple-babies-buried-garden


仏蘭西北西部のViller-au-Tertreという村で新生児の遺体8体が土中に埋められているのが発見された。それに絡んで村人の40代半ばの夫婦が逮捕された。妻の実家の地所で先ず2体発見され、さらに夫婦の家で6体発見された。しかし、夫婦の容疑ははっきりせず、一旦は妻が赤子の殺害を自供したという報道もあったが、警察側に否定されている。
また、この事件はフリー・メイソンだとかイルミナティだとかのファンども*2の妄想的な期待には添えそうもないようだ。仏蘭西では過去2年間にこのような事件が2件発覚しているが、どうも「妊娠否認(pregnancy denial)」という精神医学的症状と関係しているようだ。なお私見では、避妊が抑圧され、中絶が禁じられるカトリック国としての宗教文化も絡んでいるのではないかと思うのだが。