ほにゃらら団と福岡など

『朝日』の記事;


福岡県警、暴力団雑誌の撤去要請 コンビニ6社応諾

2010年3月25日7時59分


 福岡県内に店舗を展開するコンビニエンスストア6社が福岡県警の要請を受け、暴力団情勢を専門に扱う月刊誌などの販売中止を決めたことが分かった。「青少年が誤ったあこがれを抱く」というのが理由で、暴力追放運動に協力する立場から各社が足並みをそろえた。一方で、県警の要請は「表現の自由」を脅かすという見方も出ている。

 福岡県警によると、要請は昨年12月下旬、同県コンビニエンスストア等防犯協議会に対し文書で行った。今年2月には書店団体にも要請した。

 文書では、暴力団の組織や幹部などを詳細に紹介する月刊誌や暴力団の抗争を描くコミック誌など数社の数十種類の書籍を列挙した上で、「これらは暴力団を美化する風潮があり、青少年が誤ったあこがれを抱き、暴力団に加入してしまう恐れがあることから、売り場からの撤去を検討すべきだと考えている。ご理解の上、適切な措置をお願いしたい」と要請したという。対象には全国規模で発行する出版社の書籍も含まれる。

 これを受けてローソン、ファミリーマートミニストップ、ポプラ、デイリーヤマザキ、サークルKサンクスの6社が販売中止を決めた。ローソンは31日発売予定の雑誌から、ミニストップも4月1日から中止する。ほかの4社はすでに発注や納品をとりやめたり、店頭からの撤去を進めたりしているという。6社の福岡県内での店舗数は、ローソンの339店を筆頭に計912店。コンビニ各社の話によると、うち約半数の店舗で販売されていたとみられる。

 同県内で店舗が最も多いセブンイレブン(671店)や、am/pm(75店)は以前から販売していない。ココストアやエブリワンなど58店を展開するココストアエストは「今後検討する」としているが、担当者は「企業として暴力追放運動に協力しなければならない」と話す。
http://www.asahi.com/national/update/0325/SEB201003240054.html

勿論、警察当局が本の流通に介入するというのが問題だということはある。また、素朴な疑問なのだが、「暴力団雑誌」を読んで「青少年が誤ったあこがれを抱く」というのは事実なのだろうか。例えば、「暴力団」のメンバーにアンケート調査を行って、多くの回答者、がその手の雑誌を読んだことを「暴力団」に入った動機として挙げたとか。一般人の場合だったら、「暴力団」への好感度とその手の雑誌の購読の間に相関関係があったとか。この場合、仮令そうであったとしても、雑誌の購読→「暴力団」への「誤ったあこがれ」という因果関係に短絡させることはできないだろうけど。
所謂「暴力団雑誌」だが、知人がその手の雑誌を発行する出版社で(部署は違っていたが)編集者をしていたということもあって、昔はよく見せてもらっていた。たしかに、「美化する風潮」があるというか、やくざについてネガティヴなことは書かれていないが、これは〈業界誌(紙)〉一般の特徴だろう。まあ、民俗学の貴重な資料という感じはした。
福岡県と「暴力団」については、「wikipediaで見ると指定暴力団22団体のうち5つが福岡県に本部を置いてるんだよね」という意見あり*1。たしかに、福岡県には博多港もあれば、(石炭積み出しの)若松港もある。大きな港町では、紐育にせよ香港にせよ上海にせよ神戸にせよ、港湾労働者を束ねる黒社会も発展するのは常。それと同時に、福岡県の場合は、三池闘争というか炭鉱閉山の後始末という問題も絡んでいるのではないか。炭鉱の閉山後、地元では炭鉱に換わる新たな産業の振興とか投資の誘致というよりも、失業対策の公共事業でしのぐという策が採られた。そのため、中央政府から予算を分捕ってくる自民党系の政治家と公共事業を仕切って・人足を束ねる「暴力団」が蔓延ることになるとか。そして、道路も箱物も整備されてしまった後に、所謂生活保護不正受給問題が浮上することになる(これを巡っては、例えば久田恵『ニッポン貧困最前線』とか)。
ニッポン貧困最前線―ケースワーカーと呼ばれる人々 (文春文庫)

ニッポン貧困最前線―ケースワーカーと呼ばれる人々 (文春文庫)

福岡県とほにゃらら団といえば、青山真治の『北九州サーガ』、特に『Helpless』と『サッドヴァケイション』ということになるのだが*2、これらも上のロジックからすれば、DVD発売・レンタル自粛ということになりそうなのだが。
Helpless [DVD]

Helpless [DVD]

See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060826/1156577555