Ifの順番

アーサー・ビナード「後出しの「もしも」」『本が好き!』(光文社)40、2009、pp.42-47


新幹線の車輌の電光掲示板に流れる、"Attention: Please notify the train crew immedeately, if you find any suspicious items or unattended baggage."という英文のメッセージ;


話の内容にもよるけれど、こういう「後出しじゃんけん」ならぬ「後出しif」は、読み手や聞き手の気持ちを逆撫でする場合がある。引っくり返してIf you find any suspicious items or unattended baggage, please notify the train crew immedeately.と呼びかければ、人騒がせの度合いが減って、だいぶマシにはなる。(p.44)

電光掲示板にスクローリングしてくる「不審物や持ち主のわからないお荷物は、直ちに乗務員までお知らせください」という日本語も、突き詰めるとナンセンスだ。「テロ対策をやってます!」という見せかけばかりのポーズなのか、人々の恐怖心を煽って思考停止状態に追い込む狙いなのか、あるいは両方か。(ibid.)
その後、「ifの後出しが」「逆に愉快な演出につながるケース」として、Bob Segerの"Katmandu"が言及され(pp.44-46)、さらに何故か吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」が言及される(pp.46-47)。「俺ら東京さ行ぐだ」の落ち;

俺らこんな村いやだ 俺らこんな村いやだ
東京へ出るだ 東京へ出だなら
銭コァ貯めで 東京で牛*1飼うだ
は凄い。

*1:勿論、「ベゴ」と読まなければならない。