性以前/以後

児童ポルノ」問題に関しては、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071018/1192728137 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071101/1193896416 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080315/1205588068 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080421/1208714162 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080805/1217870245 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080930/1222710736 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090629/1246244161も。

「児童買春・児童ポルノ禁止法改正案」は「そのまんま麻生解散」という「カミカゼ」によって廃案になったようだ*1。もしも、「単純所持」が一律に禁止されたとしたら、Led ZeppelinHouses of the Holyも引っかかるんだろうな。

Houses of the Holy

Houses of the Holy

ところで、http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20090711/1247283345のコメント欄における、

t-hirosaka 2009/07/11 17:07
単行本をお持ちでしたか。
かつては、陰毛が映っているかどうかが猥褻の基準とされたので、少女のヌード写真というのは今よりももっと出回っていたような記憶があります。

nessko 2009/07/11 20:05
>少女のヌード写真というのは今よりももっと出回っていた
そうですね。記憶では、白人がモデルのものが多かった。陰毛がないとぼかしが入らないんですよね。
写真集も芸術作品だという名目で、一般誌と同じ棚に並んでいましたね。大抵「アリス」とかいう題がついてるんですよ。いまから思うと平和な時代だったんですね、あのころは。

という問答のスリップ。
たしかに、何故日本の官憲が(そして、それに対抗する側も)「陰毛」に拘っていたのかというのは興味深い問題だけど、この文脈でいうところの「陰毛」というのは第二次性徴期(以後)の徴ということになるだろう。
以前(第二次性徴期以前の)「少女のヌード写真というの」が「今よりももっと出回っていた」というのは、建前として、第二次性徴期以前の子どもは性的存在と見なされていなかったということだろう。勿論、その頃既にナボコフの『ロリータ』の翻訳も出ていたし、澁澤龍彦『少女コレクション序説』なんていう本も出ていた。勿論、フロイト『性と愛情の心理』も出ていた。つまり、第二次性徴期以前の子どもが性的存在であり、そうした子どもに性的欲望を抱く人間の存在は知られていた。しかし、公式には、それはないことになっていた。皮肉なことに、「児童ポルノ」規制の流れというのは「児童」を性的存在として認めるということになる。
ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)

少女コレクション序説 (中公文庫)

少女コレクション序説 (中公文庫)

性と愛情の心理 (角川文庫 リバイバル・コレクション K 25)

性と愛情の心理 (角川文庫 リバイバル・コレクション K 25)

今はどうかわからないが、男の子が銭湯で母親と一緒に女湯で身体を洗うということがあったが、これも小学生の男の子はまだ〈男〉と認定されていなかったということだろう。
さて、子どもが性的存在であることを否認するというのはどこでもあることなのだろうけど、亜細亜(少なくとも東南亜細亜と東亜細亜)特有なのは、(少なくとも女性の場合に限って)性以前とともに性以後があることだろう。亜細亜にやってきた西洋人が驚いたのは、或る年齢以上の女性は性を卒業したと見なされ、裸を公に晒すことが認められていたことである(Sheridan Prasso The Asian Mystique*2, p.39)。「勿論、私が子どもだった頃は、夏になると、よく老女がシュミーズだけになって、団扇をぱたぱたさせていたのを目にして、目のやり場に困ったものだが、さすがに最近の老女はそういうことはしないだろう」と書いたことがあるのだが*3、本人たちにしてみれば、既に性的存在であることを卒業していたということなのかも知れない。だから、露出の多い服を着た若い娘に対して、何てだらしないかっこうをしてるんだいと説教を垂れることは矛盾していなかったのかも知れない。
The Asian Mystique: Dragon Ladies, Geisha Girls, and Our Fantasies of the Exotic Orient

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