『朝日』と『読売』の記事;
天台座主が高野山を公式訪問する、とかで、1200年ぶりの交流とか。まあ考えてみれば室町幕府6代将軍の足利義教は天台座主経験者で、義教の護持僧だった醍醐寺三宝院門跡の満済は真言宗のトップの一つの東寺長者を務めた。だから1200年間いがみ合ってきた、という訳でもなさそうだ。足利義満は自分の息子のうち、義円を青蓮院門跡に入れ、義円は天台座主に上り詰めた(後の足利義教)。義昭を大覚寺(真言宗大覚寺派)、法尊を御室仁和寺(真言宗御室派)、虎山永隆を相国寺(臨済宗相国寺派)に入れるなど、まあそれぞれ仲良くやっていたようだ。もっとも義昭は義教に警戒された揚げ句、日向国まで逃亡して殺されているが。
http://d.hatena.ne.jp/Wallerstein/20090529/1243558500
平安時代以降初 天台座主、真言宗の高野山を公式訪問へ2009年5月29日20時4分
天台宗の半田孝淳座主が、6月15日に真言宗の総本山高野山金剛峯寺(和歌山県高野町)である「宗祖降誕会」に出席する。天台宗トップが高野山へ公式に参拝するのは、真言宗、天台宗が開宗した平安時代以降初めて。天台宗を開いた最澄と真言宗を開いた空海は唐(中国)で学んだ留学仲間で、帰国後も交流を続けた。晩年の最澄が教典を借りようとしたところ、空海が貸し出しを拒んだことから、関係が疎遠になったとされる。
真言宗の松長有慶座主が06年11月、天台宗の半田座主が07年2月と、ほぼ同じ頃に座主に就いたことなどから親交が深く、半田座主が「一度お参りさせて欲しい」と松長座主に持ちかけ実現した。
天台宗歴代座主の業績や動向を記す「天台座主記」に、これまで金剛峯寺に参拝した記録はない。真言宗トップとしては資延敏雄・先代座主が05年の比叡山開宗1200年行事の際に天台宗総本山の比叡山延暦寺(大津市)を訪ねている。
今回の公式訪問について、天台宗務庁は「今回の訪問を機会にこれまで以上に交流を深められれば」と期待する。金剛峯寺の宗務総長公室は「同じ仏教教団として、相互理解やともに手を携えていくうえで、とても良い機会だ」とコメントした。
http://www.asahi.com/national/update/0529/OSK200905290091.html
天台宗と真言宗の対立って言っても、大正大学は天台宗と浄土宗と真言宗(豊山派)の共同の大学だしな。まあ、この場合、真言宗といっても高野山ではないわけだが。また、空海と最澄の確執だが、竹内信夫『空海入門』によれば、空海が密教について教えを請うた最澄を、それ以前に梵語を勉強しなよとあしらったということであるらしい。まあ、学生に対して教師がごたごた言う前に仏蘭西語(or 独逸語)の勉強をちゃんとしろと諭すのは現代でも(少なくとも文系では)よくあることなのでは?
天台座主、初の高野山入り…空海・最澄の確執から1200年
天台宗(総本山・比叡山延暦寺、大津市)の半田孝淳・天台座主が、6月15日に高野山真言宗総本山の金剛峯寺(和歌山県高野町、松長有慶座主)で営まれる「宗祖降誕会(ごうたんえ)」に参列する。
天台座主が高野山へ赴いた公式記録はなく、平安時代の両宗開宗以来初めて。ともに「相互理解を深めるきっかけに」と期待している。
半田、松長両座主はトップ就任後、法要などで同席する機会が増え、昨年夏頃から、「一度高野山へお参りしたい」「季節の良い頃にぜひ」などと話が進展した。高野山側が開祖・空海の誕生日を祝う年間最大の法要への参列を打診した。
空海と、天台宗の開祖・最澄はともに唐で仏教を学んで親密に交流。最澄は空海から密教を学んだが、晩年は教えの違いや経典の貸し借りなどを巡って対立したとされる。
2005年10月に天台開宗1200年の法要が延暦寺であった際、当時の資延敏雄・金剛峯寺座主が法要に参加したが、天台座主が高野山へ行くのは、比叡山の公式記録「天台座主記」などにも記述がないという。
金剛峯寺によると、半田座主は宗祖降誕会の法要に参列後に空海の御廟を参拝し、松長座主と会談する。
天台宗務庁は「世間で言われる確執は、現代はなく、交流を深める契機になれば」とし、高野山真言宗宗務所も「手を携えて、『救い』など共通の課題に取り組む礎に」と歓迎している。
(2009年5月29日15時41分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090529-OYT1T00623.htm
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*1:日本の佛教宗派をセクトと呼ぶことはあまり妥当ではない。See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080301/1204369049 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090317/1237269241