http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090202/1233580171を書きながら念頭に置いていたのは、アレントの俗に”New York Essays”と称されている「パーリア」論だった。

- 作者: ハンナアレント,寺島俊穂,藤原隆裕宣
- 出版社/メーカー: 未来社
- 発売日: 1989/12/01
- メディア: 単行本
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アーレントが着目した点は、パーリアが多様な形態の抵抗を企て、またつねに社会的および政治的アウトサイダーとしてとどまったとしても、彼らが世界の確固たる基盤から逃避することはなかったという事実である。そうではなくユダヤ人のパーリアは、古代イスラエルの彼らの祖先の預言者たちと同様に、また幾分かローマ世界における初期キリスト教徒たちにも類似した仕方で、厳密な意味で世界に帰属することなく、しかし世界のなかに寄留者としてとどまる。パーリアはこうして、しばしば世界の周縁からその支配構造にプロテストすることを通じて、意図することなく世界の保持に寄与する存在となる。なるほどパーリアは、世界とみずからの共同体の双方において単なる周縁的な存在としてとどまるであろう。その限りで彼らは、「世界を保護していく仕事の重荷から解放されている大きな特権を享受している」*1。しかし、パーリアは、世界の支配的かつ独占的で腐敗した諸勢力への抵抗を通じて、政治の尊厳と複数性の確保に貢献していくのである。(p.73)

- 作者: 千葉真
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1996/07/05
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*1:Men in Dark Times, p.14からの引用。