「名に代へて」?

承前*1

国家は僕らをまもらない―愛と自由の憲法論 (朝日新書 39)

国家は僕らをまもらない―愛と自由の憲法論 (朝日新書 39)

田村理『国家は僕らをまもらない』に、岸信介が戦犯として逮捕された時に詠んだ


名に代へて聖戦の正しさを 萬代までも伝へ残さん
という短歌が引用されている(p.211)。これは「一高時代の恩師がおくった」

二つなき命に代へて惜しきものは 千載に朽ちぬ名にこそありけれ
への返歌*2
「聖戦の正しさを 萬代までも伝へ残さん」という人物が何故後に日米安保条約を強行したのかという突っ込みもしたくなるが、短歌としてどうよと思った。彼の孫は、美しい国に相応しくないと批判すべきであろう。
目の汚れを落とすためにも、白州正子『かくれ里』に引用されていた後水尾院の歌を引いておく;

葦原よしげらばしげれおのがまま
とても道ある世とは思はず(p.205に引用)
また、辞世の歌;

ゆきゆきて思へばかなし末とほく
みえしたか根の花の白雪(p.207に引用)
かくれ里 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

かくれ里 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081224/1230144140

*2:指示はされていないが、字数から考えて、「聖戦」はきよきいくさと訓読みするのだろう。