http://tu-ta.at.webry.info/200609/article_6.html *1
2006年のエントリーなのだけれど、つい最近コメントが新たに付いたよう。このエントリーとは直接関係はないのだが、「天皇制」について思っていることを若干メモ。
「天皇制」を擁護する人もそれに反対する人も、「天皇制」という特殊日本的な用語をひとまずは避けて、人類学用語としての王権、政治学用語としての君主制という一般的な用語を使って、思考・議論した方がいいのではないかと思う。議論は君主制か共和制かという政体の選択の問題として進められるべきだということだ。皮肉なことに、〈反天皇制〉を掲げることによって、「天皇制」に反対する人も〈世界に唯一無二〉という天皇制イデオロギーにさらに深く絡め取られたままになってしまう。
安丸良夫『近代天皇像の形成』第二章「近世社会と朝廷・天皇」では、江戸時代の儒者たちの天皇論が紹介されている(p.47ff.)。これらにおいて焦点になっていたのは、先ず徳川幕府の権力を正当化しつつ、その中に如何にして天皇を位置づけるのかという問題であり、また現代の社会学者や政治学者が権力と権威の関係*2として論じている事柄だろう。(天皇制を含む)立憲君主制においては、取り敢えず権力と権威が分離されている。例えば、佐藤優はそのことを以て「天皇制」を肯定している*3。反「天皇制」な人々の課題は如何に佐藤優などの主張に反駁し、「天皇制」ではない仕方で権力と権威の分離を基礎づけるのかについて説得力のある提示をできるのかということになるのではないか。それがない以上、「天皇制」は一方においては既成事実という習慣の力によって、他方では〈必要悪〉として、その正当性を持ち続けるということになる。理路のひとつとしては、〈立憲主義〉の徹底ということがあるようには思うが*4。
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