「本の読みすぎ」

空腹の技法 (新潮文庫)

空腹の技法 (新潮文庫)

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080923/1222197918へのコメントありがとうございました。オースターは『偶然の音楽』という小説も出していますね。
さて、引用したポール・オースターの発言(の少なくとも一部)は社会科学批判としても読めるだろう。「本の読みすぎじゃないか」。ここでいう本は小説ではなくて、社会学や経済学や経営学の本であってもおかしくない。「いわゆる現実的(realistic)な小説の約束事にどっぷり浸ってきたせいで、現実感覚が歪んでいるんじゃないかな」――これはいわゆる実証的な社会科学の「約束事にどっぷり浸ってきたせいで、現実感覚が歪んでいるんじゃないかな」と書き換えることも可能だろう。かつてシュッツがお人形さん(homunculus)と呼び、ガーフィンケルが馬鹿(judgmental dope)と呼んだような事態。

Collected Papers I. The Problem of Social Reality (Phaenomenologica)

Collected Papers I. The Problem of Social Reality (Phaenomenologica)

Studies in Ethnomethodology

Studies in Ethnomethodology

「偶然」の問題は神学的な意味における超越/内在という問題にも関連している。これに関しては、バーガーのThe Precarious Vision*1を再度マークしておく。
The Precarious Vision: A Sociologist Looks at Social Fictions and Christian Faith

The Precarious Vision: A Sociologist Looks at Social Fictions and Christian Faith