http://d.hatena.ne.jp/sean97/20080911/p2で知る。
『毎日』の記事;
というか、元ネタとされている米軍のポスター*1ってすごく有名で、米国その他でそのパロディみたいのはけっこうあると思う*2 。公共広告の名作と言われている。誰もが見たことがある。それ故に、それと似たものがあれば、誰もがぱくりなんだなと気づく。和歌の本歌取りでわざわざ元ネタを明らかにしたりしない。そもそもパロディの場合、わざわざこれは何とかのパロディですとか註記しないでしょう。というか、そんなことはみんな知っているというのが前提的なお約束なのであって、わざわざ註記の必要が生じてしまったら、パロディはパロディとして存立できない。ただ、この”I Want You For US Army”の場合、これをネタに何かしようとすると、元ネタが元ネタだけに、反戦か戦争マンセーなのか、或いはViva Americaなのか反米なのかというスタンスが問われるということはあると思う。
<夏祭りポスター>米の募兵用ポスターにうり二つ 三重・伊賀市認める9月11日13時52分配信 毎日新聞
三重県伊賀市で8月に開催された「2008市民夏のにぎわいフェスタ」のポスターが、第一次世界大戦時、米国で募兵用に使われたポスターに酷似していたことが分かった。10日の定例市議会で議員が質問。市側は指摘を認め、「二度とこのようなことがないようにしたい」と答弁した。元とみられる米国のポスターは、星柄のシルクハットをかぶった初老の男性が正面を指さし、「I WANT YOU FOR U・S・ARMY」と軍隊への参加を呼びかけている。一方、フェスタの構図は同一と思われる人物が祭りへの参加を呼びかけ、衣装だけが洋服から浴衣に変わっている。
フェスタは、市や上野商工会議所でつくる実施委員会の主催。商議所によると、ポスターは実施委にも入っている印刷業者がデザインし、実施委には、市から130万円の補助金が支払われた。
メンバーには市商工観光課の職員も入っていたが、異論は出なかったという。ポスター1000枚、ほぼ同じデザインのチラシが3万8000枚作製された。
商議所に市民から指摘があり、業者に確認したところ、「別のイベントで似た図柄のポスターを見て、インパクトがあったので引用した。浅はかだった」と話したという。【傳田賢史】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080911-00000007-maiall-soci
ところが、上の記事を見ると、そういう前提は通用しないかのようだ。盗作だと青筋立てる側も、批判されて「浅はかだった」と反省する側も。これは「三重県伊賀市」という〈田舎町〉だから仕方がないと言われるかも知れない。無知なのはエリートである筈の毎日新聞記者にまで及んでいる。「星柄のシルクハットをかぶった初老の男性」とあるが、このおじさんにはちゃんとUncle Samという名前があって、米国自体を擬人化したものとも考えられている。そうしたことを言及してしかるべきなのに、していない。
これはどうしたことなのか。もしかしたら、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080909/1220981426でいい加減に口走った「米帝国主義の衰退の始まり」ということと関係があるのかも知れない。左翼系やら右翼系のblogとかばっかり読んでいると、米国というのは極悪非道だったり正義の味方だったり、とにかくいまだに凄い国のように思えてしまう。しかし、一般の日本人にとっては、そんなのはどうでもいいというか、関心の外なのではないか。バッシングではなくてパッシング。
*1:東京大学情報学環http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/standardresult/id/93 米国議会図書館http://www.loc.gov/exhibits/treasures/trm015.html
*2:例えば、Jane Bassett ”Weapons of Mass Communication: propaganda for and against war”( http://www.socialistworker.co.uk/art.php?id=13403)という記事に添えられているヴェトナム反戦ポスター。