日本洋書販売の倒産

帝国データバンクのサイトから;


2008/07/31(木) 海外書籍・雑誌輸入販売
日本洋書販売株式会社
自己破産を申請
負債65億円


TDB企業コード:985681760

「東京」 日本洋書販売(株)(資本金15億3786万円、東京都港区元赤坂1-1-8、代表軒野仁孝氏、従業員52名)は、7月31日に東京地裁へ自己破産を申請した。

 申請代理人は(略)

 当社は、1953年(昭和28年)11月に洋書の卸販売を目的に設立。洋書輸入販売業界ではトップクラスの実績を有する業者で、「NEWSWEEK」「TIME」など有名雑誌をはじめ、「ハリーポッター」シリーズなど一般書籍、専門技術書など幅広く扱っていた。米英など英語圏を中心に、独仏伊など約20ヵ国約150社と取引関係を有し、取次業者、書店、百貨店などの販路を有していた。「洋書はYOHAN」のブランドも確立され、92年9月期には年売上高約96億3800万円を計上していた。

 2003年6月には同業の(株)タトル商会を合併したことで、更なる高い市場シェアを獲得。近年では、同業者のM&Aも実施してグループ化し、書籍店舗を積極的に新規出店するなど拡大路線を進めていた。

 しかし、ネット販売など書籍販売チャンネルの多様化などから業績はジリ貧となり、2005年8月期(決算期変更)には年売上高約55億6300万円に減少。積極的なM&A戦略、社内システムへの投資などにともなう有利子負債が収益を圧迫していた。このため、2006年1月にはグループの再編を実施し、ファンドが出資する純粋持株会社インターカルチュラルグループ(株)の傘下入りで経営再建を模索していた。

 店舗閉鎖など積極的なリストラの影響から2007年11月期(決算期変更)の年売上高は約31億2500万円にまで減少、過大な在庫も負担となり、約10億6500万円の最終純損失計上を余儀なくされていた。このため、親会社からの出資などでしのいでいたが、資金繰りは改善せず、7月末の決済が困難となっていた。

 なお、グループ会社で、「青山ブックセンター」運営の(株)ボード(2004年7月、民事再生)の継承会社である洋販ブックサービス(株)(資本金4億2921万5300円、同所、同代表、書籍小売店青山ブックセンター」「流水書房」など運営、2005年8月設立)は、同日同地裁へ民事再生法の適用を申請した。

 負債は、2008年5月末で日本洋書販売が約65億円、洋販ブックサービスが連帯保証債務を含めて約54億円。
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/2715.html

また、「青山ブックセンター」を運営する、子会社の洋販ブックサービスに対しては、あのブックオフが支援に乗り出すという;

ブックオフがABCの支援をする狙いは2つあると思われる。

1つ目は佐藤社長が公言している通りで、ブックオフのノウハウにこれまで無視してきたマーチャンダイズという考え方を導入したいというものである。現在のブックオフ本部はMD能力がゼロである。したがって、膨らんでしまった在庫を店舗や本部のMD提案で売り切っていくというノウハウが無い。要は何千冊と持ち込まれてしまい、105円棚でも動かなくなってしまった「五体不満足」やシドニィ・シェルダンは、今のブックオフは結局廃棄するしかない現状なのだが、MD提案力を身につければ、そうした在庫を何とかできると考えているのだ。ABCに人を投入して「提案して売る」ノウハウを三年計画ぐらいで回収するつもりなのだろう。伸び悩むブックオフの既存店を救う柱の一つとして位置づけているに違いない。

2つ目は、ブックオフ側からの出版業界とのコネクションを強化したい、つまり出版社と仲良くなりたいという意図だ。出版業界のブックオフへの嫌悪感は異常ともいえるもので、すでに感情論の話になってしまっている。例の一億円寄付の話もそうであるが、ブックオフ側としては歩み寄りたいのに、出版社側ではシャットアウトしているという現状に、ブックオフは困っているのだ。ブックオフとしては、出版社に対して、返品で戻ってきてしまった倉庫の死に在庫を断裁処分するぐらいなら、買い取るので新古本としてブックオフの流通網にのせませんか?という提案をしたいはずなのだが、現状では出版社側がなかなか交渉テーブルについてくれないという歯がゆさがあるのだろう。実際はゴマブックスなど、そうしたスキームにのってきている出版社もあるのだが、今回のABCの件を突破口にしてそうした出版社を増やしたいと考えているのだと思う。
http://d.hatena.ne.jp/chakichaki/20080731#p1

これに対して、仲俣暁生氏は「まずはブックオフ傘下入りにより懸念されるABCのブランド価値低下を防ぐことが肝心だと思う」とコメントしている*1
なお、『本屋のほんね』では、洋販倒産の影響について、

今回の事件の影響はかなり大きい。日本の洋書販売は、実は大部分をYOHANに頼っていたからである。洋書で有名な丸善も、かつては自前で洋書を仕入れていた時期もあったが、今ではすっかりYOHANに頼っている現状だ。もちろん影響は丸善だけにとどまらない。洋書取次の最大手が倒産したのだ。下手をすると、日本の書店から洋書が消え、洋書はアマゾンでしか買えない、なんて最悪の事態が発生する可能性だってあったわけだ。幸いなことに日貿や嶋田洋書、UPS、タッシェン、ベイカーなど、洋書の他卸が健在であり、仕入れ先を使い分けることで最悪の事態は回避できそうである。東京ブックランドもICG資本だと聞いていたので心配していたが、どうやら存続するようでよかった。ただし、残念ながらYOHANの事業自体を引き継ぐところは今のところは無いようだ。まあこうなった以上、実質引き継ぐのは不可能に近い。

今回一番問題になるのが洋雑誌だ。洋雑誌に関しては、日本ではほとんどYOHANしか取り扱っていなかったため代替がきかない。基本的に洋雑誌は水曜と土曜に入荷するのだが、今週の土曜日の週刊誌などは、もはや手配が絶望的だ。当分入荷手配が難しいことを考えると、かなりの顧客離れが進むだろう。日本の洋雑誌市場はこれをきっかけに壊滅するかもしれない。丸善はどうするんだろうか?直仕入とかにするしか方法が無いのか?タワーから仲間卸してもらうことってできるのか?いい方法が思いつかなくて困っているので、どなたかご教示いただきたい。

と語っている。ところで、洋雑誌はHMVやタワー・レコードで買うことが多かったのだが、こういうCDショップにおける洋雑誌の仕入れはどうなっているのだろうか。
なお、本屋関係では、丸善大日本印刷の傘下に入るというニュースもある;

丸善大日本印刷の子会社に

2008年7月31日


 経営再建中の書店大手・丸善は31日、筆頭株主で業務資本関係にある大日本印刷の子会社になると発表した。丸善が行う第三者割当増資を大日本印刷が43億円で引き受け、株式保有比率を約51%(議決権ベース)まで引き上げる。丸善は店舗システムの開発などに資金を使い、今後3年で売上高100億円増、営業利益10億円の確保を目指す。
http://book.asahi.com/news/TKY200807310242.html

*1:http://d.hatena.ne.jp/solar/20080801/p1 また、仲俣氏のこのエントリーは「倒産」事件に関するリンクが充実している。