「始まり」「終わり」、実は反復(メモ)

承前*1


また市村弘正杉田敦『社会の喪失』からのメモ。


杉田 ただ、アレントのいわゆる「始まり」というのは、すぐに終わってしまうものですね。パリ・コミューンのように。ですから、ある意味で敗北・失敗に注目しているともいえるわけです。制度化に対しては、警戒的ですし。
市村 そう考えると、アレントの「始まり」は「終わり」と実はそんなに違わないということになりますか。
杉田 それは、アレントをどう読むかにかかわるでしょう。「始まり」を伝統的な共和主義に結びつけると、どうしても制度化された共和を語ってしまいがちです。しかし、アレントの「活動」というのは、そういうものではないでしょう。もっと刹那的なものであり、制度化されうるようなものではないはずです。
市村 共和主義的な解釈をする人は、アレントアメリカ建国を取り上げたことを強調するわけです。
杉田 あれは、アレントのミスリードという気がします。
市村 『革命について』を一番いいテキストだとする人もいますね。しかし、違うでしょう。アレントがその程度の人なら、僕は関心をもたない。彼女はあらゆるものを次々に剥奪され、法的・政治的保護を失った、敗北者でしょう。「むき出しの生」そのものですよ。その意味で、負け方も「終わり方」もわかっていると思います。共和主義や共同体主義の理論家とは思わないのです。「専門家」の読み方は違うのかもしれませんが。(略)(pp.122-123)
私はこの2人に反して、『革命について』を「一番いい」とまでは言わないが、「いい」本だと思っている。今詳しく展開することはできないが、『革命について』を貫くモティーフのひとつは、「始まり」や「終わり」というよりも、反復である。或いは、(デリダ的な言葉遣いを借りれば)「幽霊(spectre)」といえるかも知れない。また、『革命について』は「共和主義」的な読みだけでなく、アレントアナーキズム的に読むことに対してもレリヴァントなテクストだろうと思う。それは、republicを「共和国」と自動的に訳すことを一旦停止するということと関わっている。
On Revolution (Classic, 20th-Century, Penguin)

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グローバル化とアイデンティテイ・クライシス

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