櫻田淳 on 「保守」

『毎日』の鼎談で、林真理子は「自民党の味方をするわけじゃないけれど、何をやってきたのか分からないようなお兄ちゃんやお姉ちゃんが出てきて、老獪(ろうかい)な政治家が消えてしまうことがいいのか」と言っている*1。しかし、自民党保守主義がスーツを着たような「老獪な政治家」が残っているのかということを考えてみるべきだろう。
ということで、


鈴木英生「政治の転換期:/下 東洋学園大准教授(政治学櫻田淳氏」http://mainichi.jp/select/seiji/09shuinsen/news/20090820dde018010054000c.html


曰く、


日本で最初期の政治学者の一人、小野塚喜平次は、社会主義を国家の国民への力を強めるとして批判しつつ、貧困層の救済も唱えた。「彼の立場が、日本の社会科学における保守派の基本でしょう。つまり日本の保守派には、自由主義が組み込まれているのです」

 自民党を作ったのも、主に戦前の自由主義者吉田茂石橋湛山緒方竹虎らはみな、反軍国主義的で自由主義経済を信奉し、皇室を崇拝していた。「終戦直前に死んだ清沢洌(きよし)も、生き延びたら彼らと共に活躍したでしょう。鳩山一郎東条英機と対立した。官僚出身の池田勇人佐藤栄作は、もちろんプラグマティストです」


 プラグマティックであるとは、目的のために合理的な手段を使うということでもある。他方、極端な主張は、往々にして不合理だ。「保守政治は、政治とは利害調整であることを前提に、絶対的な敵を作らないもの。今の一部『保守』派のように、絶対的な敵を作る発想は、フランス革命に始まりポルポト派に至る左翼のものです」

 また、自由主義的な保守は政府に過剰な期待をかけないが、国民統合が損なわれる事態も許さない。最近なら、「派遣切り」。クビにするだけでなく、「すぐに寮からも出ていけ」といった対応は、まさに批判されてしかるべきだと考える。「戦前の自由主義者たちは、金もうけをいいことだと思った。そのうえで、もうけた金は弱き人々への支援に使いました」

ここで岸信介*2の名前が言及されていないことは注目すべきだろう。また、自民党には既に「保守」の居場所はなく、少なくともそのプロパガンダ部門は熱湯浴的な右翼革命主義者に乗っ取られてしまった感がある。

なお、「保守主義」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060216/1140096638 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060504/1146764157 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060513/1147548713 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061010/1160499009 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061109/1163086138 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070116/1168966875 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070427/1177646298 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070507/1178561806 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070708/1183895661 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070807/1186490802 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080129/1201627245 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090213/1234550817 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090604/1244090099でも言及している。

さて、小野塚喜平次って南原繁の師匠だったと思ったが、加藤節先生の『南原繁』は今手許になし。また、櫻田淳氏が自身のblogで小野塚喜平次に言及している;


http://sessai.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-64f2.html

南原繁―近代日本と知識人 (岩波新書)

南原繁―近代日本と知識人 (岩波新書)