関東大震災その他

承前*1
fenestraeさんが、関東大震災の時の〈朝鮮人虐殺〉について、沖縄人である比嘉春潮の回想(『沖縄の歳月 自伝的回想から』、中公新書、1969)から長文の引用をしており、とても参考になる*2。その内容はもとより比嘉春潮という人も興味深いのだが、次の箇所がとりわけ目を引いた。孫引きさせていただく;


交番でも、同じ問答の繰り返しであった。ごたごたしているうちに、酒屋の親父とでもいったような腹のでっかい男が、

「ええ、面倒くさい。やっちまえ」

と怒鳴った。腰には不気味な日本刀をさしている。一瞬みなシーンとなった。ヒヤリとした時、早稲田の学帽をかぶった青年が、

「この人なら知っています。沖縄の人だ」

と叫んだ。私には見おぼえのない顔だった。彼はすぐ父親らしい男に、

「黙ってろ」

とどやしつけられた。

それでも、なんとかまあ淀橋署に行くことになった。雨上がりの日で、泥んこ道だった。私ひとりだけ足駄をはいていて、ひときわ背が高かった。ぞろぞろ歩いているうちに、まわりをとり囲んでいた自警団のひとりが、

「おい、沖縄人なら空手を知っているぞ」

と叫んだかと思うと、二人の男がやっとばかりに後ろから私の両脇を抱えた。和木君の細君は、

「ひどいわ、ひどいわ」

と抗議したが、私たちはそのままの姿で引き立てられて淀橋署に入った。

〈日本人〉によって〈日本人〉に対して発せられた「黙ってろ」という言葉。
ところで、「おい、沖縄人なら空手を知っているぞ」という言葉だけれど、このイメージの連合ってどうなんでしょうか。村井さん*3。勿論、「空手」という言葉それ自体については、数十年後の回想なので、そこら辺は割り引く必要があるでしょうけど。

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060309/1141920028に関して、using_pleasureさんの「今日のメディア・リテラシー。」*4をマークしておく。