上海には日本人向けの日本語で書かれた雑誌が幾つかあるが、その中でも『フーイズム』という雑誌には独特の風格がある。
 その2月号の特集記事は、


  馬宏傑(文&写真)(上林早苗訳)「猿と共に去りぬ」、pp.12-29


 タイトルは〈オヤジ・ギャグ〉めいてはいるが。
 河南省新野県は中国における猿回し藝人の二大拠点のひとつ。藝人たちは、ここから、貨物列車に無賃乗車しつつ、中国全土を流浪する。馬さんは、猿回し藝人のひとり「老楊」に3年間に亙って同行取材を試みた。ここで、中国の農村の貧しさetc.に言及すると、もう陳腐になってしまうので、敢えてしないが、民俗学的にも興味深いものだと思い、紹介した次第。あと、猿回し藝の敵は近代的な「動物愛護」精神でもある。
 そのほか、『フーイズム』のこの号で面白かった記事は、朱家角で「ミニチュア自転車」細工を作り続ける黄啓発さんについての記事(pp.32-34)。上海の「棚戸」、つまり「バラック小屋」の歴史と現状についての佐々木清美「消えゆく棚戸地区」(pp.38-39)なり。