20年目の失敗

TV朝日の報道;


20年間ストーカーか 46歳男「彼女見ることで安心」

2018年6月19日 11時57分 テレ朝news


 30代の女性にストーカー行為をしたとして46歳の男が逮捕されました。男は女性が高校生の時から約20年間、ストーカー行為を続けていたとみられています。

 五代儀大容疑者は今月、都内に住む女性の自宅前を車で複数回、うろついた疑いが持たれています。警視庁によりますと、五代儀容疑者は約20年前、都内のガソリンスタンドでアルバイトをしていた、当時高校生の女性に一目ぼれをしたということです。アルバイトが終わった女性の後をつけて家を特定し、ごみをあさって名前などを調べていたとみられています。五代儀容疑者はその後、約20年間にわたって家ののぞきや無言電話を繰り返していたとみられ、「彼女を見ることで安心できた」と容疑を認めています。
http://news.livedoor.com/article/detail/14886667/

「約20年間、ストーカー行為を続けていた」ということは「「約20年間」ばれなかったということだ。「約20年間」に亙って告白が勿論のこと、自らの存在を彼女に知らせることもなく、唯々彼女の存在を確認し続けていた。〈忍ぶ恋〉*1。如何にして、この20年越しの〈忍ぶ恋〉は失敗したのだろうか、相手に自らの存在を提示することは、普通の恋愛においては始まりというか成就のための第一歩なのだが、〈忍ぶ恋〉においては恋の終わりを意味する。
王家衛恋する惑星*2王菲を思い出したりしたのだが、彼女との類似は表面的なものに止まるだろう。宗教的に言えば、究極の空念仏。仏が私の念仏を聞き届けることを全く期待することなく念仏を続けること。
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減っている丸刈り

高岡佐也子「丸刈り強制の野球部、減ってます。自発性重視で「弱くても勝てます」」https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/15/marugari_a_23459696/


高校野球を巡る高橋秀実*1へのインタヴュー。
「この5年で丸刈りを強制する部が減っていますね」。そうなんだ?
ところで、野球部=丸刈りというのが定着した理由というのは何だったのか。スポーツ刈りとかGIカット*2とか色々とあるのに、野球部の「丸刈り」というのは異様であった。原則として髪型自由のサッカー部と両極をなしていた。野球部=丸刈りの定着というのは、野球が、戦後の何時頃からか、ハイカラな存在ではなくなったこと、baseballから分岐したことと関係が或るのだろうか。
「昔の野球部って、「出家」のイメージでした」というけれど、これは違う。「丸刈り」とスキン・ヘッドは違う。刈ることと剃ることの違い。道具で言えば、バリカンと剃刀の違い。

*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071203/1196663346

*2:日本では、石原慎太郎に因んで〈慎太郎刈り〉と呼ばれていたのでは?

大阪地震

承前*1

『ハフィントン・ポスト』(『朝日新聞』)の記事;


2018年06月18日 12時12分 JST | 更新 19時間前
大阪北部地震で9歳女児ら3人死亡。けが人の情報も相次ぐ。大阪市内では火災が4件
大阪市では民家の外壁が崩れ80歳の男性が死亡。救急要請は81件

朝日新聞社提供


大阪北部地震で9歳女児ら3人死亡 けが人情報も相次ぐ

 18日午前7時58分ごろ、大阪府北部で震度6弱地震を観測した。気象庁によると震源の深さは13キロ、地震の規模を示すマグニチュード(M)は6・1と推定される。京都府南部では震度5強兵庫県南東部と奈良県震度5弱を観測。近畿地方を中心に、関東地方から九州地方の一部にかけて広い範囲で震度5弱から震度1を観測した。気象庁は、揺れの強かった地域では1週間程度、震度6弱程度の地震のおそれがあるとして警戒を呼びかけている。

 気象庁によると震度6弱を観測したのは、大阪市北区大阪府高槻市枚方市茨木市箕面市の5市区。震度5強京都市京都府亀岡市など18の市区町村だった。

 大阪府災害対策本部などによると、高槻市立寿栄小学校のプールの壁が倒れ、4年生の女子児童(9)が下敷きになり、病院に搬送されたが、死亡が確認された。大阪市東淀川区上新庄2丁目では民家の外壁が倒れて男性(80)が下敷きになり死亡した。茨木市でも男性(84)の死亡が確認されたという。

 大阪府内ではほかに、箕面市で女性(62)が骨折するなど計3人がけが。豊中市で6人、池田市で2人、京都府内では、家具の下敷きなどになり5人がけがをしたという。

 大阪市災害対策本部によると、市内では4件の火災が発生。西淀川区大和田3丁目の住宅付近から出火したが、住人は避難して無事だった。ほかに救護17件、救助58件、救急81件の出動があったという。

 高槻市下田部の住宅付近でも出火したという。

 関西電力によると、午前8時55分現在、大阪府内で約17万戸、兵庫県内で約500戸が停電した。戸数が多かったのは大阪府北部で、豊中市が約9万5千戸、箕面市が約4万1千戸、吹田市が約2万5千戸停電した。

 また、停電でエレベーターが止まって閉じ込められたとの通報が、大阪市内で10件、豊中市内で3件寄せられた。

 高槻市南庄所町では水道管が破裂した。

 交通網も大きく乱れた。新幹線は東京―小田原間と名古屋―博多間で緊急停止。順次運行を再開したが、東海道新幹線米原―新大阪間と山陽新幹線の新大阪―岡山間は午前10時現在運転を見合わせている。

 京阪神のJR各線、阪急、南海、近鉄阪神、京阪の各私鉄も一時全線で運転を見合わせた。

朝日新聞デジタル 2018年06月18日 11時29分)
https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/17/osakahokubujishin-higai_a_23461274/

See also


安藤健二「《大阪地震震度6弱高槻市の現地写真 「阪神大震災で感じたような揺れ」」https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/17/takatsuki-fire_a_23461250/(2018年06月18日 11時14分 JST
吉川慧、Shino Tanaka「《大阪地震》大混乱の駅、途方にくれる乗客、USJにも被害… いま現地は(写真)」https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/17/osaka-photo_a_23461251/ (2018年06月18日 11時24分 JST
ウェザーニュース大阪北部地震、400年ぶり有馬-高槻断層帯が関連か」https://www.huffingtonpost.jp/kazuhiko-kuze/osaka-earthquake-arima_a_23461268/
ウェザーニュース「大阪で震度6弱地震南海トラフとの関連は?」https://www.huffingtonpost.jp/weather-news/osaka-nankai-20180618_a_23461369/

Justin McCurry “Osaka earthquake: three people dead after 6.1-magnitude tremor” https://www.theguardian.com/world/2018/jun/18/osaka-earthquake-japan-61-magnitude-tremor
Junko Ogura and Susannah Cullinane “Japan quake: Strong tremor shakes Osaka, killing at least 3” https://edition.cnn.com/2018/06/17/asia/japan-osaka-quake/index.html
“Japan earthquake: Child and two men dead and hundreds injured” https://www.bbc.com/news/world-asia-44516531


CNNの報道は太平洋を越えたグアテマラでもマグニチュード5.6の地震が起きていたことを伝えている。

「秘密」は重いか

子どもと悪 (今ここに生きる子ども)

子どもと悪 (今ここに生きる子ども)

河合隼雄『子どもと悪』*1から。


秘密は、それを持つことによって他人との間に「距離」を保つことができる。一心同体ではない。これは言いかえると、秘密を持つと、他人との間に「へだたり」が出来て、孤独に陥る、ということにもなる。秘密はまったく両刃の剣である。従って、秘密を持つ人が、それをどのように抱きかかえているかが重要な鍵となってくる。(p.147)
そして、

(前略)子ども自身が自分の劣等な部分や忌避すべき部分と考えて、何らかの秘密を隠しもっていると、その子供と他の子どもたちとの間に説明不能心理的距離が生じてくる。不幸な生い立ちの子どもが、それを誰にも知られていないのに、いじめの対象となって不幸の二重苦を味わったりするのも、このためである。そのような秘密は、むしろ誰かが分かちもってくれることによって心が軽くなることが多い。しかし、そのためには両者の間に深い共感的な人間関係が成立していなくてはならない。(p.148)

分母がなければ意味がない

呉智英*1「Fラン大学で「8画以上の漢字が書けぬ学生がクラスに2人」」http://blogos.com/article/305156/


先ず本文は全体として間違っていない。経済的格差は、名門の中高一貫校に子どもをやれるかどうかということから、教養の格差、知的格差に翻訳され、世代間で再生産される。これが「古典的な階級社会とは違う階級社会」である、と。
まあそれはいいのだけれど、「思考力ある支配層」の対極として、「Fランクの大学」のことが言及されている。曰く、「私が教えたことのあるFランクの大学では、八画以上の漢字が書けない学生がクラスに二人いた」。これは編集者もショックを受けたらしく、タイトルにも使っている。でも考えてみれば、「クラスに二人いた」というのは分母つまり「クラス」の人数がわからなくては殆ど意味をなさないのだった。100人のうちの2人というのと50人のうちの2人というのと10人のうちの2人というのでは、全然感じが違う。全二者だったら、事態はそんな深刻ではないというか、殆どの者はちゃんと「八画以上の漢字が書け」るわけだから、まあ優秀なんじゃないのと解釈することも可能だ。10人のうちの2人ということになると、ちょっと敏感な人ならやばい! と感じるだろう。さらに、5人のうち2人になると、超やばい! こういう数学以前ともいえる数字に対する敏感性(鈍感性)は「古典的な階級社会とは違う階級社会」と関係があるのかどうか。
さて、「階級社会」というのはそもそもそういうものだったともいえるのではないだろうか。かつては、多くの社会において、教養の多寡どころか、識字者/文盲という線が引かれていたわけだ。呉氏の言葉に添って述べれば、境界線は、「八画以上の漢字が書け」る/書けないではなく、「漢字」そのものの読み書きができる/できない、或いは平仮名の読み書きができる/できない、だったわけだ。「階級社会」或いはハイアラーキー社会が知的格差を伴うものだということは、左右のポピュリズムの多くが反知性主義を旨としていることにも窺えるだろう。これまでは、それが普通教育を含む福祉国家的政策によって、一応緩和されていたということだろう。