帰国?

3月26日、10時ちょい過ぎ成田発の飛行機で上海に帰還。
こんな混雑した成田空港は初めて。チェック・インに20分、手荷物検査に20分、出国手続きに10分。気がついたら、搭乗開始寸前じゃないですか。実際は出発が10分程度遅れたので、そんなに慌てる必要はなかったのだが。機内では、睡眠不足もあって、星野智幸『目覚めよと人魚は歌う』を読みながら、眠りに就いてしまい、ガタンという衝撃音で目覚め、乱気流かよと一瞬思ったが、浦東への着陸であった。
バスで静安寺へ出て、そこからタクシーを拾って、とにかく無事帰宅。やれやれ。
夜はDVDで『ホテル・ルワンダ(廬旺達飯店)』を観る。

漢字

久々にhttp://www.explore.ne.jp/sh.phtmlをチェックしたら、


3月22日、中国応用言語学会の陳章太会長によれば、今まで中国語に関しては、繁体字簡体字の2種類が使用されていたが、2008年度から簡体字に統一されることが明らかになった。すでに、国連では簡体字の使用に備えて、準備作業が行われている。
 普通語の普及にともなって、現在の香港でもかなり普通語が使えるようになっている。また、海外の華人の間でも簡体字への認識が高まっている。
 全席世界で英語についで第2位の実用性を持つといわれている中国語は、今後もますます使用頻度が高まるに違いない。
http://www.explore.ne.jp/news/article.php3?n=2468&r=sh
という記事が。
美的な観点からすれば、正字は美しく、簡体字(日本の新漢字も含む)は醜い。

Wikipedia in China

承前*1

中国からWikipediaにアクセスできない。当局によってアクセスがブロックされているわけ。調べたら、それは2004年6月以来のことだという*2。問題の本質はhttp://government.zdnet.com/?p=2044で要約されているように、”really it's about the trouble that top-down governments have with the grass-roots collaboration that Wikipedia offers”というところにあるという*3
但し、Geoffrey A. Fowler氏*4が紹介しているように、在米華人を中心にそれへの抵抗も既に組織されてはいる。
なお、中国に於けるWikipediaについては、


Philip P. Pan
“Reference Tool On Web Finds Fans, Censors”
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/02/19/AR2006021901335_pf.html


が詳しいので、是非参照されたい。
問題はたんに”top-down governments”ということではなさそうだ。政府(党)−人民の関係が教師−生徒の関係に重ねられていること。教育と政治の混同ということなのだが、儒教的な徳治主義レーニン主義的な〈前衛党根性〉がブレンドされているので、その心性が変わっていくというのはなかなか厄介なことなのではないか。さらに、人民の側がお上に教育されたいという欲望を持っているということもあるし。また、これが中国だけの問題だということでもない。日本にだって、〈中国共産党的心性〉を共有する人は(表面的な政治的スタンスを超えて)沢山いる。却って、制度的にはより自由な日本に於いて、その内面化の度合いは高いのかも知れない。それから、〈教育〉というのは愚民化をもたらすものなのかも知れない。何しろ、定義上、教師−生徒関係の存立の必要条件は知識量の差異であり、知識の源泉へのアクセスの不均衡だからだ。つまり、生徒が〈知ってしまった〉とき、教師−生徒関係は解消し、ほかの関係性へと移行せざるをえない。

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060325/1143283277

*2:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0406/15/news055.html http://government.zdnet.com/?p=2044

*3:後述するように、もっと根深い問題があるように思われる。

*4:“Chinese Censors of Internet Face “Hacktivists” in US” http://yaleglobal.yale.edu/display.article?id=6981

路の名前

中国では(というよりも日本以外の国では多くの国でそうかもしれないが)、住所は道路の名前+番地で表示する。タクシーで行き先を告げるときも目的地の道路名(+その近くの道路名)をいうし、郵便も道路名+番地を書けば着く*1。にもかかわらず、


 鐘暉「“坊間路名”梳理加快」『新聞晨報』2006年3月25日


によると、上海市には当局から未だ正式に認可されていない、つまり通称に留まっている道路名が約1000あるという*2。また、他と重複する道路名も多々あるという。例えば、徐家匯から静安寺方面に走る「華山路」。金山区にも通称「華山路」があるという。また、金山区と宝山区にそれぞれ「友誼路」があるという。上海市居民地名辧公室では、年内にこのような道路名について、他との重複がないかどうかを調べ、公式化(「転正」)するという。このような未公認の道路名は、記事で例として挙げられている徐匯区の「沙家浜路」のように、上海の中心部ではなく、そもそもは村落だったものが都市化とともに人が聚住するようになったところらしい。道路名の重複については、記事ではその原因を記していないが、金山にしても宝山にしても、数年前までは上海市内ではなかった。それぞれが県*3だった。それが上海市に組み込まれたために起こったと考えられる。

*1:これはどうしてなのかわからないけれど、香港では「道」といい、中国大陸や台湾では「路」といいますね。

*2:道路に対する中国語の量詞は「条」だが、日本語ではどうだろうか。一条とか五条というようにそもそもは「条」だったけれど、現代ではやはり「本」でしょうか。

*3:中国の県は英訳ではcountyであり、日本でいうところの郡に相当すると考えてよかろう。

山中智恵子

今になって初めて知りました。合掌。


訃報:山中智恵子さん80歳=歌人

 鋭敏な言語感覚による前衛的な作風で知られた歌人の山中智恵子(やまなか・ちえこ)さんが9日、急性心不全のため死去した。80歳だった。葬儀は近親者で済ませた。自宅は非公表。喪主はめいの加藤昭子(かとう・あきこ)さん。

 名古屋市生まれ。三重県鈴鹿市在住。京都女子専門学校(現京都女子大)卒。前川佐美雄に師事。「日本歌人」復刊にかかわり、56年に第1回日本歌人賞を受賞した。59年には塚本邦雄らと「極」を創刊。57年の第1歌集「空間格子」刊行後、前衛短歌運動に合流し、63年に第2歌集「紡錘」を発表した。85年には病死した夫を歌った歌集「星肆(ほしくら)」で迢空賞を受賞。他の歌集に「みずかありなむ」、評論集に「三輪山伝承」など。

 ▽歌人の馬場あき子さんの話 前衛短歌が盛んだった昭和30年代からのおつきあいで、親しい歌友だった。戦後の女性歌人の中でも特に個性豊かな作品世界を持っていた。そのユニークな文体の底には、野太い思想性があり、古代に対する考えも斬新だった。

毎日新聞 2006年3月12日 0時52分 (最終更新時間 3月12日 1時25分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/fu/news/20060312k0000m060132000c.html

追悼記事ということだと、NYTGuardianだな。NYTデリダの時には徹底的なブーイングを受けたけれども。この『毎日』の記事はそれでも詳しい方だった。でも、「鋭敏な言語感覚による前衛的な作風」って具体的にどういうことなの?って思いますよね。既に故人に親しんでいる人ならともかく、この記事を読んで、そうではない読者に故人への関心が喚起されるかどうかは甚だ疑問。〈斎宮〉研究についての言及が抜け落ちている。