Wikipedia in China

承前*1

中国からWikipediaにアクセスできない。当局によってアクセスがブロックされているわけ。調べたら、それは2004年6月以来のことだという*2。問題の本質はhttp://government.zdnet.com/?p=2044で要約されているように、”really it's about the trouble that top-down governments have with the grass-roots collaboration that Wikipedia offers”というところにあるという*3
但し、Geoffrey A. Fowler氏*4が紹介しているように、在米華人を中心にそれへの抵抗も既に組織されてはいる。
なお、中国に於けるWikipediaについては、


Philip P. Pan
“Reference Tool On Web Finds Fans, Censors”
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/02/19/AR2006021901335_pf.html


が詳しいので、是非参照されたい。
問題はたんに”top-down governments”ということではなさそうだ。政府(党)−人民の関係が教師−生徒の関係に重ねられていること。教育と政治の混同ということなのだが、儒教的な徳治主義レーニン主義的な〈前衛党根性〉がブレンドされているので、その心性が変わっていくというのはなかなか厄介なことなのではないか。さらに、人民の側がお上に教育されたいという欲望を持っているということもあるし。また、これが中国だけの問題だということでもない。日本にだって、〈中国共産党的心性〉を共有する人は(表面的な政治的スタンスを超えて)沢山いる。却って、制度的にはより自由な日本に於いて、その内面化の度合いは高いのかも知れない。それから、〈教育〉というのは愚民化をもたらすものなのかも知れない。何しろ、定義上、教師−生徒関係の存立の必要条件は知識量の差異であり、知識の源泉へのアクセスの不均衡だからだ。つまり、生徒が〈知ってしまった〉とき、教師−生徒関係は解消し、ほかの関係性へと移行せざるをえない。

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060325/1143283277

*2:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0406/15/news055.html http://government.zdnet.com/?p=2044

*3:後述するように、もっと根深い問題があるように思われる。

*4:“Chinese Censors of Internet Face “Hacktivists” in US” http://yaleglobal.yale.edu/display.article?id=6981