Via https://hikikomoriobaba.hatenadiary.com/entry/2023/10/13/162615
NHK『笑わない数学』で取り上げられた「コラッツ予想」*1 。
任意の或る正の整数(自然数)を出発点として、偶数なら2で割る、奇数なら3倍して1を足すという操作を繰り返していくと、最終的に1に行きつく*2。
これは、誰でも容易く、このような操作を反復すれば1になるということを検証することができる。しかし、このような検証は、10とか446とか8,324とかいった具体的な自然数についてであって、このようなことを何回反復しても、この「予想」が定理になることはあり得ない。定理になるには、如何なる自然数についても、偶数なら2で割る、奇数なら3倍して1を足すという操作を繰り返していけば1になるということが確定されなければならないが、自然数というのは無限に存在するのだった。検証を無限回繰り返すということは、この世界が終わっても完遂できないだろう*3。この検証の罠から抜け出して、何か別の視点を確保しない限り、「予想」の定理化は不可能である。
「コラッツ予想(コラッツの問題)とは」https://mathlandscape.com/collatz/
この記事によると、3倍(3a+1)ということが重要であって、同じ奇数倍+1であっても、5a+1だと、途中でループしてしまい1に行きつけない。
1倍+1、つまり偶数なら2で割る、奇数なら1を足すということでも、1に行きつける。
10→5→6→3→4→2→1
14→7→8→4→2→1
17→18→9→10→5→6→3→4→2→1
23→24→12→6→3→4→2→1
37→38→19→20→10→5→6→3→4→2→1
7a+1や9a+1だとどうなるのだろうか?
「#2 コラッツ予想(シーズン2)」https://www.nhk.jp/p/ts/Y5R676NK92/blog/bl/pmg0p5PX8L/bp/pn8omzj69Y/
「コラッツ予想」証明の試みで使われる「ほとんどすべての数(almost every integer)」という表現について。
70年代に入ると、アメリカの数学者、コーネリアス・エベレットはこんな感じの書き出しで始まる論文を発表しました。「(コラッツの)どんな数でもいつかは必ず1に行くという予想が正しいのかどうかについては、何の成果も知られていない。私は、ほとんどすべての数(almost every integer)は、いつかは必ず最初の数よりは小さくなる、という事実を証明したが、これはちょっと興味深い結果ではないだろうか」で、「ほとんどすべての数」って番組でも出てきた表現ですが、何だそれ?って思いませんでしたか? 「ほとんどすべて」という言い方は曖昧な感じがして数学らしくない、そんな印象をうけます。もし学校のテストでこんなことを書いたら先生も困っちゃいそうですよね。
では「ほとんどすべて」がどういうことなのか、すこしイメージがつかめるように、超ざっくり説明してみます。
分かりやすくするため、いったんコラッツ予想のことを忘れてください。代わりに、たとえば「自然数のうち、どのくらいの“割合”の数が2nという形で表せるか?(nは整数)」という問題について考えてみることにします。該当する自然数は、2,4,6,…と無限にあります。一方、該当しない自然数も、1,3,5,…と無限にありますが、偶数と奇数の個数はおなじだと考えてみると、「自然数の“半分”は2nという形で表せるけれど、のこり“半分”はそうじゃない」となります。
じゃあ続いて、こんな問題だとどうでしょう? 「自然数のうち、どのくらいの“割合”の数がn×nという形で表せるか?」 まず、該当する数は、たとえば1=1×1,4=2×2,9=3×3,…ですから、1,4,9,16,25,36…が該当し、数が大きくなるとだんだんスカスカになっていきますが、でも無限に存在します。一方で、該当しない数、つまり2,3,5,6,7,8,10,…も無限に存在します。ではこの場合、自然数のうちどのくらいの“割合”の数が、n×nという形で表せることになるでしょうか?とりあえず自然数の範囲を「1からn×nまで」で区切って考えてみることにすると、そのうちn個の数が該当することが分かりますよね。
だからその“割合”は「n割る(n×n)」で、すなわち「n分の1」です。ということは100以下の自然数については“割合”は10分の1だし、1万以下の自然数なら100分の1になります。nが大きくなると、“割合”はどんどん減っていくことが分かります。こんな風に考えると、「自然数全体でn×nという形で表せる数は無限個あるけれど、そういう数が存在する“割合”は限りなくゼロだ」という結論になります。(逆に言えば、そうではない数の“割合”は限りなく100%に近い、ともいえますね)
では、エベレットの「ほとんどすべての数について、◯◯だ」の意味に戻ります。それはつまり「限りなく100%に近い“割合”の数について、◯◯は正しい」という意味なんです。もっと言い換えれば「限りなくゼロに近い“割合”の数については、◯◯が正しいかどうかは分からない」ということでもあります。う~ん難しいですね。でもいまの説明ですこしイメージがつかめたでしょうか?? スタッフは番組制作のために勉強を始めた頃、「ほとんどすべての数」の意味でつまづいて、しばらくしてこの説明にたどり着いてようやくイメージがつかめたんですが、このブログがみなさんのモヤモヤ解消にも少しでも役に立っていれば・・とおもいます。
「コラッツ予想」に1億2,000万円の賞金を出しているのは「音圧爆上げくん」という会社;
といいつつ、最後にあと1つ、さらに話を難しくしちゃいます。上のエベレットの確率論の手法をつかった証明が厄介なのは、「この証明の結果、◯◯が正しいかどうかわからない数の“割合”は限りなくゼロに減らせたけれど、でもその個数はまだ無限個のこっている」ということです。ですから、数学者としては、エベレットのような証明の作戦は妥協であり、予想の反例が見つかってしまう余地が残っている以上、もともと証明したかった事柄には結局一歩も近づけていない、とも言えちゃうわけです。そうは言っても証明の道筋が何一つ立っていなかった時代からすると、大きく前進したと言えるわけですが!
ITmediaビジネスオンライン編集部「「懸賞金1億2000万円」音楽系の企業が、数学の未解決問題に なぜ?」https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2107/07/news136.html
*1:https://www.nhk.jp/p/ts/Y5R676NK92/episode/te/B29QR562RM/ Wikipediaの項は「コラッツの問題」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%84%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C 英語では”Collatz conjecture”だが、conjectureがexpectation やforecastとどう違うのかについては今は議論しない。
*2:負の整数だど、-1に行きつくとということになるだろうか。