既に8月のことだが、ブック・デザイナー/映画批評家の鈴木一誌氏*1が亡くなっていた。享年73歳。
共同通信(『東京新聞』)の記事;
生涯に1万点以上の本をデザインしたということだけど、1970年代から80年代にかけて、鈴木氏はまだ杉浦康平から独立する前、師匠と共同で講談社現代新書の装幀をしていたのだった。鈴木一誌というデザイナーを意識したのは講談社現代新書を通じてだったのだ。あの頃の現代新書のカヴァーにおけるグラフィック(イラストレーション)とテキストとの組み合わせやバランスは今見ても古臭い感じはしない。
鈴木一誌さん死去 グラフィックデザイナー
2023年8月30日 07時29分
鈴木一誌さん(すずき・ひとし=グラフィックデザイナー)19日、誤えん性肺炎のため死去、73歳。東京都立川市出身。葬儀は近親者で行った。喪主は妻文枝(ふみえ)さん。
杉浦康平氏*2に師事し、独立。「大辞泉」「鈴木清順全映画」など数々のブックデザインを手がけた。著書に「画面の誕生」など。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/273555
国書刊行会のツィート;
ブックデザイナー鈴木一誌さんの訃報が伝えられました。
— 国書刊行会 (@KokushoKankokai) 2023年8月26日
弊社では「世界幻想文学大系」において杉浦康平さんとコンビを組まれ、その後の出版物について大きな方向性を示していただいた恩人でした。ただただ感謝するのみです。
御霊の安らかならんことをお祈りします。https://t.co/kISMuvrPti pic.twitter.com/P7Ul683DTP
ばるぼら氏*3のツィート;
鈴木一誌さんが亡くなった、と聞きました。『アイデア』379号の取材時に一度だけ表紙に写ってる仕事場(月桂樹に覆われた外観が有名な家。検索して)に行って、奥の方の畳の部屋で資料を探した記憶。映画と写真が本当に好きというか、専門なんだな、という印象を持つ本棚でした pic.twitter.com/M9R1J0TmC3
— BAR B OR A (@blogdexjp) 2023年8月25日
鈴木さんは東京造形大学の第一期生で、初期の講師だった杉浦康平に影響を受け、そのままアシスタントになり大学を中退。1985年に独立。デザインの文体は杉浦直系だけども、アジアには行かず、戸田ツトムの影響を適度に取り込みつつ、色数少なめ、直線と鋭角を多用するソリッドさが特徴だった。
— BAR B OR A (@blogdexjp) 2023年8月25日
鈴木さんで一番好きなデザインは『日本のポスター史1800's-1980's』(1989、名古屋銀行)。静的に図版を載せる美術カタログとは違い、ページ全体の視覚的な高揚感を優先した、図版に介入する動的な誌面デザイン。どのポスター本よりも記憶に残っている。安らかに。
— BAR B OR A (@blogdexjp) 2023年8月25日
See also
工作舎「グラフィックデザイナー鈴木一誌さん逝去」https://www.kousakusha.co.jp/NEWS/weekly20230830.html