「トウ」が語る

承前*1

石井百合子*2「「鎌倉殿の13人」トウ役・山本千尋梶原善との「生涯忘れない」ひととき 」https://news.yahoo.co.jp/articles/f36c9d32df6c21a22049399e7be8946c3fe4972a



山本千尋(トウ)が梶原善(善児)を語る。


謎に包まれていたトウだったが、28日放送の第33回「修善寺」では善児がトウの両親を殺害した仇だったことが明かされ、トウが善児に刃を向ける衝撃的な展開を迎えた。源頼家(金子大地)によって深手を負った善児を、「ずっとこの時を待っていた……」と背後から襲ったトウ。この場面でのトウの心理について、山本は「善児に復讐したわけですが、そこには葛藤があったと思います。きっと復讐したくない自分もいたと思うんですよね。善児には育ててもらった恩がある。だけど親の仇をとらなければならないという葛藤の末、けじめとして決意を下したのだと思います」と述懐する。

トウの両親を殺害しながらトウは生かし、刺客として育て上げた善児。親の仇とわかっていながら彼なくしては生きられたかったトウ。山本は、二人の愛憎、複雑な関係に思いを巡らせる。

 「梶原さんがどう感じていらっしゃったのかはわからないですけど、台本のト書きを見る限り、善児もいずれこの日がくることをわかっていた、本望だったんじゃないかという気もして。トウにとっては、善児を殺したら自害するぐらいの覚悟だったと思うんです。だけど、生きる道を選んだということは、彼のためにも生きていかなければと思ったのではないか。けじめをつけたけれど、それ以上に根っこで抱えているふつふつと湧き上がるものがトウを生かしているのではないか、という気がします」

梶原善について;

「(役との)ギャップすごいです。飄々とされていて、こんなこと言ったら怒られるかもしれませんが、とてもおちゃめな方です(笑)。でも、お芝居ではピリッと締めてくださる。特に印象に残っているのが初対面の時です。梶原さんとリハーサルでは一度もお会いできなくて、クランクインの日に初めてメイク室でお会いして、緊張していたら気さくに話しかけてくださって。撮影の合間には他愛もない話で緊張をほぐしてくださって、撮影で私が悩んでいたり大事な時には手を差し伸べてくださるんです。佐藤二朗さんもそうですが、梶原さんがいてくださると現場がワッと明るくなるんですよね。大先輩にもかかわらず、皆さんにいじられていて(笑)。いつも『ありがとうございます、梶原さん』と心の中で思っていました」

 梶原と劇中さながらの“師弟関係”を育くんでいった山本。その梶原がクランクアップを迎えた日のことを、山本は「その時間は一生忘れないと思います」と語る。

 「大雨を降らすシーンで、梶原さんが寒さに震えていて。でも梶原さんのクランクアップの日だったのでわたしもハイテンションになっていて、二人でびしょぬれになりながら子供のようにはしゃいでいました。梶原さんは三谷さんの作品で常連の方ですが、山本耕史さんしかり“三谷ファミリー”にはそういう方が多い気がします。なので『鎌倉殿の13人』では、そういった意味でも自分は恵まれていると思います」

また、NHKの「各分野のプロフェッショナルが作り上げたセットのクオリティー」について;

中国武術を3歳から習い、数々の世界大会で優勝し、2014年公開の映画『太秦ライムライト』でベストアクション女優優秀賞を受賞。新世代のアクション女優として注目を浴びる山本。「鎌倉殿の13人」では俊敏な立ち回りも話題を呼んでいるが、初めて経験した大河ドラマの現場で圧倒されたのが、各分野のプロフェッショナルが作り上げたセットのクオリティーだったという。

 「セットに入った瞬間、圧倒されました。雑草一つからして本当に職人技というか。トウが巻いている鉢巻も久しく洗っていなさそうな具合になっていて。なおかつ小栗さん演じる義時をはじめキャラクター一人ひとりが、ちゃんと年をとっていっているのを実感します。わたしが演じたトウは18歳からの登場で、小栗さんにもご相談させていただいたんですけど、一人の女性の人生を生き抜くことで考えることはたくさんあります」