After a charisma

鹿取茂雄「新興宗教の本拠地だった“ボロボロの廃墟” 「心霊スポット」と噂される現場を直撃してみると…《教団は6年前に解散》」https://news.yahoo.co.jp/articles/b7f04baa08c14abde47265b0beb9ee428a171acb


四国*1にある広大な「廃墟」。内部は徹底的な破壊と落書きの対象となり、荒廃しきっている。元々は「聖福院」という「宗教法人」だった。
荒廃ぶりもさることながら、「聖福院」という団体の盛衰が興味深かった。宗教社会学では森岡清美先生が唱えた「教団ライフサイクル論」というのがあるけれど(See eg. 『新宗教運動の展開過程』)*2、この「聖福院」は「ライフサイクル」を全うできずに夭折してしまったという感がある。1985年に「福岡阿幸」という女性が「真言宗山階派」として設立した。彼女はそれなりの「カリスマ」があった人のようだけど、2015年に逝去。教祖の死とともに教団は解散してしまった。最初のうちは、教祖のカリスマ性や御利益の誘導でやっていけるが、教祖の人格から独立した教典や教義を確立したり、「カリスマ」に頼らない官僚制組織を構築したりしなければ、組織としては行き詰ってしまう。カリスマ的な教祖の死というのはそのようなライフ・ステージに飛躍するチャンスでもあるわけだけど、「聖福院」はこの飛躍で躓いてしまった。或いは敢えて飛躍しなかった。世襲という仕方で組織を継続する途もあった筈だし、幹部の誰かが二代目として居座るという可能性もあった筈だけど、そのような可能性は選ばれなかった。それほど「福岡阿幸」という教祖のカリスマへの依存が強かったということだろうか。それとともに、ちゃんと「解散」できたということは、しっかりした組織が存続していたということだ。宗教に限らず、駄目な組織(法人)というのは死ぬに死ねない。法人が解散するためには、理事会の解散決議が必要だけど、理事会も開けないくらい組織が崩壊していれば、死ぬに死ねず、ゾンビの如く生き永らえるしかない。

さて、この「聖福院」があの「パナウェーブ研究所*3とともに「千乃正法会」を「母体」としているという都市伝説があるらしい*4。しかし、教団解散後の「管財人」としてこの「廃墟」を管理している弁護士はこの伝説を明確に否定している。 

*1:ここでは「四国」としか記されていないが、ネット検索をすれば、香川県坂出市にあることが直ぐわかる。

*2:Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100325/1269491168

*3:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20061025/1161790069 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20111028/1319737573

*4:「聖福院」を鍵言葉として検索すると、トップで出てくるのはこの都市伝説を鵜呑みにしている頁である。https://www.departure-ruins.com/posts/5905802/