「詩」と「エッセイ」(文月悠光)

文月悠光*1「「言葉が私の先をゆく」」『書標』(ジュンク堂書店)496、pp.2-3、2020


この人の詩は読んだことがないのだった。
少し抜書き。


詩は世界への驚きや発見を大事にし、自由に演出するショートムービーのようだ。一方でエッセイは、他者の幻想に全力で反抗し、実直に綴る、いわばドキュメンタリーだ。
「幻想に全力で反抗」とは、他社から一方的に押し付けられた(たとえば「若い女性詩人」といった)レッテルに、違和感を突きつけることだ。朗読会に出演した際、初対面の男性客に「朗読にエロスが感じられないね。最近セックスしてる?」と尋ねられ、仰天した。作品と作者の性体験にどんな関係があるというのか?(p.2)
また、

人生は物語ではない。死という結末を見据えて、それに向かって走っていくような生き方はやめようと誓った*2。たぶんその誓いは、私人が意識する前に、詩に表れている。言葉が私の先をゆくのだ。過去よりも今、これからの言葉を追ってほしい。追ってもらえるように、私は言葉に身を尽くし続けたい。(p.3)