「完成型」/「成長型」(角田光代)

承前*1

集英社のパンフレット『はじめての開高健』所収の「角田光代さんと行く開高健記念文庫」(pp.8-13)に曰く、


開高健とパリ』で、角田さんは〈作家には、完成型と成長型がある〉と分析している。
「年齢に関わらず最初から確固たる文体を持っているのが完成型で、徐々に文体を獲得し模索しながら自身の世界観を作り出していくのが成長型。開高は『パニック』でデビューした26歳のときから、豪華絢爛なフランス料理のフルコースのような文体を完成させていました。村上春樹さんや吉本ばななさん、江國香織さん、川上弘美さんも完成型の作家だと思っています。デビュー時からその作家だけの完璧な文体を持っている。
私自身は典型的な成長型ですね。デビュー当時と今の文章を並べたら、同じ人間が書いたとわからないはず。試行錯誤のあげく、直木賞をいただいた『対岸の彼女』の少し前、30代半ばぐらいからストーリーを重視してあえて無個性な文章を目指すようになりました」(p.11)