An anachronism

ロジ*1竹中平蔵さんがパソナグループの取締役会長ということは覚えておきたい」http://logicalplz.hatenablog.com/entry/2018/06/04/005153


竹中平蔵*2について。


竹中平蔵さん、小泉内閣総務大臣郵政民営化担当大臣を務めたりテレビの討論番組なんかにもよく出てきて有名な人物ですね。

最近では肩書きとして「東洋大学教授」や「慶應義塾大学名誉教授」といったものがよく使われていますが、忘れてはいけないのは彼は株式会社パソナグループの取締役会長だということです。営利企業の意思決定に携わる人なわけです。利益追求を第一の目的とする会社という法人の役員なわけです。

で、特定の営利企業の役員であると同時に国家の意思決定にも影響を及ぼしているんですねこの人。
加計学園問題が噴出して今や知らない人はいないという「国家戦略特区」。竹中さんはこの国家戦略特区について話し合う諮問会議のメンバーでもあります。
実は、加計学園とはまた別の角度から国家戦略特区が問題視されたことがあるんですが、それが他でもないこの竹中さんについてでした。

外国人家事労働支援が特区の事業とされ、神奈川や東京でパソナがその事業者として認定されたことについて、パソナグループの会長である竹中さんが国家戦略特区諮問会議のメンバーなのはおかしいんじゃないかということでした。ごもっとも。
一企業の役員が、選挙で選ばれたわけでもないのに国の政策に影響を及ぼし、結果として役員を務める企業が恩恵を受けたわけです。利益誘導を疑われるのも仕方ありません。

そのパソナはかなり日本の中央政府関係の仕事を請け負っているということ。
さて、このエントリーには593のブクマがついている*3。それはけっこうなことなのだが、その中に、

mouseion 現代の奴隷貿易こと外国人技能実習制度の発案者がこのパソナ(PASONA)会長の竹中平蔵さんその人です。で内容もろくすっぽ確認もせず加計理事長よろしくお友達だからと承認して高プロ共々やられてるのが安倍晋三です。
2018/06/04
http://b.hatena.ne.jp/mouseion/20180604#bookmark-365296901
というコメントがあり、それに対して、227個の星がついている。幾ら何でも、竹中が「外国人技能実習制度の発案者」であるわけがないだろう。「外国人技能実習制度」*4が始まったのは1993年であり、その頃は竹中はまだ国家政策に正面から影響力を行使できる立場にはいなかった。竹中が「外国人技能実習制度」についてどういう発言をしているのかは知らないけれど、「制度」の「発案者」として罪責を問うことは不可能だ。金正恩が邪悪な人間であるのは事実だけど、北朝鮮が日本人拉致を盛んにやっていた頃にはまだ生まれていなかったか、生まれていたとしても幼児だった彼に日本人拉致の罪責を問うことは不可能だということと理屈としては似ている。
国際研修協力機構のサイトを読んでいると、見事に水漆喰が塗られているな(whitewashed)と感じてしまう。

外国人技能実習制度は、1960年代後半頃から海外の現地法人などの社員教育として行われていた研修制度が評価され、これを原型として1993年に制度化されたものです。

技能実習制度の目的・趣旨は、我が国で培われた技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進です。
制度の目的・趣旨は1993年に技能実習制度が創設されて以来終始一貫している考え方であり、技能実習法には、基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と記されています。

技能実習制度の内容は、外国人の技能実習生が、日本において企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、出身国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るものです。期間は最長5年とされ、技能等の修得は、技能実習計画に基づいて行われます。
https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/index.html

でも、歴史的経緯としてはそうだろう。竹中平蔵が絡む余地はないように思う。
「外国人技能実習制度」については、


連合「守ろう!技能実習生の人権 〜外国人技能実習制度の適正な実施を〜」https://www.huffingtonpost.jp/rengo/foreign-workers_a_23406205/


も参照のこと。