「有害図書」(メモ)

『ハフィントン・ポスト』(『朝日新聞』)の記事;


2018年04月17日 13時15分 JST | 更新 13時間前
タイトルに「エロ」書籍、相次ぎ有害指定 研究書も指定で「やり過ぎ」の声も
「青少年の健全な育成を阻害するおそれがある」と判断した。


朝日新聞社提供

タイトルに「エロ」の書籍、相次ぎ有害指定 研究書も

 性的表現の歴史などを考察した書籍が、相次いで自治体の有害図書指定*1を受けた。研究書まで指定するのはやり過ぎだとの声も上がっている。

 3月30日に北海道が有害指定したのは「エロマンガ表現史」(太田出版)。同月23日には滋賀県が「全国版あの日のエロ本自販機探訪記」(双葉社)を有害指定した。いずれも青少年健全育成条例に基づき有識者による審議を経て「青少年の健全な育成を阻害するおそれがある」と判断した。18歳未満への販売が禁止され、書店などでの陳列も一般書籍と区別される。

 二つの書籍は、タイトルで「エロ」とうたい、女性の裸体や性的行為が描かれた本の表紙やマンガのコマを引用している。だが「表現史」の主題はマンガにおける乳房や性器の描き方の変遷の研究。「探訪記」はネットの普及により消えゆくエロ本自販機の現在を探るルポルタージュだ。日本雑誌協会は「新たな分野の研究書であり、フィールドワークの労作だ」と、有害指定に疑問符をつける。

朝日新聞デジタル 2018年04月17日 12時22分)
https://www.huffingtonpost.jp/2018/04/17/title-ero_a_23412885/

ここで、20年以上前(1996年1月10日)のジャック・デリダの言葉を引用してみたい。「異邦人の問い:異邦人から来た問い」(廣瀬浩司訳、in 『歓待について パリのセミナールの記録』*2、pp.47-94)から。

(前略)電子メールやインターネット(こうした名前が指し示しているすべてのことを考えているわけですが)の発達にともなう数多い変化の徴候の中でも、いわゆる公共空間の構造を根底から変化させるような徴候を特別に論じることにしましょう。さきほどわれわれが話し、これからもまた話すであろうことは、ギリシャにおけるxenosとxeniaについてであり、オイディプスアンティゴネについででした。彼らはxenoiに話しかけるxenoiであり、話しかけられた者は、反対に彼らに話しかけ返すのです。とは言え、電話、ファックス、電子メール、インターネット、さらにはテレビや盲目化した電話回線*3など、さまざまな人工補助装置(dispositif prothetique)によって構造化されている公共空間に対したとしたら、たとえばソフォクレスの意味論はどう抵抗することができたでしょう。先日われわれが問題にしたことは、国家の介入(これは最近ドイツでおこなわれた)や国家というコロスの介入が、インターネットのネットワークにおける、いわゆる「ポルノグラフィー」の通信を禁止したり検閲したりしようとするとき、それがどのような意味を持つかという問題でした。もちろんクロソフスキーの『歓待の掟』のことではなく、インターネット上に流されたテキストや映像にたいする禁止や検閲のことです。ドイツ政府は、ポルノグラフィーを対象とする二百のネットを禁止しました(『カナール・アンシェネ』紙によると、「乳」という単語を検知してポルノグラフィーかどうかを判断するセンサーが、乳ガン患者たちが真面目に会話していたフォーラムへのアクセスを禁じてしまったそうです)。こうした検閲やその原則の妥当性については、今のところ判断を差し控えておきます。(後略)(pp.78-79)
歓待について―パリのゼミナールの記録

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アンティゴネー (岩波文庫)

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