現代の座敷牢

朝日新聞』の記事;


障害ある息子、20年?檻に入れる 父「暴れるため」
2018年4月7日12時34分


 障害者の40代男性が自宅敷地のプレハブ内に設置された檻(おり)で生活させられていたことが発覚したとして、兵庫県三田(さんだ)市が1月、男性を保護し、福祉施設に入所させたことがわかった。男性に目立った健康被害は見られなかったが、市は虐待と判断。捜査関係者によると、男性には精神疾患があり、檻での生活は20年以上に及ぶという情報もある。県警は監禁の疑いで捜査している。

 三田市によると、今年1月16日に福祉関係者から通報があり、担当職員らが同18日に訪ねると、プレハブ内に木製の檻があり、男性が入れられていた。檻は大人が横になれるほどのスペースで、南京錠をかけられるようになっていた。

 プレハブ隣の母屋で暮らす男性の父親は市の調査に対し、男性が暴れるため、プレハブ内に檻を設置し、若いころから中に入れて生活させていた、と説明したという。プレハブにはエアコンがあり、檻にはシートが敷かれていた。父親は男性について食事は自宅で食べ、風呂にも入っていた、とも話しているという。

 男性の健康状態に問題はなかったが、三田市は虐待と判断。男性を福祉施設に入所させた。県警に連絡したのは約1カ月後で、市の担当者は「長期的な対応が必要と考え、経過を観察していた」としている。男性の障害内容や家族構成については「プライバシーで公表できない」とした。

 大阪府寝屋川市では昨年12月、統合失調症と診断された娘が自宅内のプレハブの小部屋に閉じ込められて衰弱死し、両親が監禁と保護責任者遺棄致死の罪で起訴される事件があった。
https://www.asahi.com/articles/ASL473DKVL47PIHB004.html

中国の農村地帯とかではなく、日本の普通の町場の民家で起こったこと。この事件について、最初『ハフィントン・ポスト』で知ったのだが、記事のタイトルだけ見て、日本国内じゃなくて国際ニュースだと思ったのだった*1。中国でも都市部でこういうことが起これば、凄い騒ぎになる筈。
世界的に精神医療の開放化、さらには脱施設化が進んでわかったことは、これまで精神病の症状だと考えられてきた多くの症状がたんなる拘禁反応*2にすぎなかったということだろう。ここで考えなければいけないのは、「男性が暴れるため」「監禁」したというよりも、彼の行動を制限しようとしたために「暴れ」が激しくなったのではないかという因果の順序だろう。
「すぐ裏に住む80代の女性は「プレハブはずっと前からあった。息子の顔は知らないけど、時々『わあー』と叫ぶ男の人の声を聞いた」と話した」という*3。お一人様のまま死を迎える所謂〈無縁社会*4というのが問題になって久しい。それ以前に問題なのは、家族(核家族直径直系家族)の孤立ということだろう。この家族だって、親戚は気づかなかったのかという疑問がある。また、妻は既に亡くなって*5、順序としては「父親」が逝き、最後に独り座敷牢に入れられた息子が死ぬという容易に予想しえるシナリオにはかなり寒いものがある。