- 作者: 九鬼周造,小浜善信
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2016/02/17
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が引用されている(p.140)。一瞬、「白たへの富士の高嶺に雪は降りつつ」じゃなかったっけと思い、その瞬間、私の憶えていたのは、『新古今集』*2に収録されたヴァージョンだったのだということに気づいた。
田児の浦ゆ打出でて見れば真白にぞ富士の高嶺に雪はふりける
また、直接、『新古今集』を読んで憶えたのではなく、多分『百人一首』*3を通じて憶えていたのだと思う。藤原定家がチョイスしたのは新古今ヴァージョンの方だったので*4。
田子の浦にうち出でてみれば白たへの富士の高嶺に雪は降りつつ
- 作者: 佐佐木信綱
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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- 作者: 安東次男
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1976/11
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「真白」と「白たへ」のほかに、『万葉』ヴァージョンと『新古今』ヴァージョンの違いは、「ゆ」か「に」かということ。「ゆ」という助詞を見ると、ああ『万葉』なんだなと思ってしまう。末尾が過去の出来事の想起或いは過去の出来事の結果の(現在への)残存を意味する「ける」(けり)か、それとも現在進行形的な「つつ」か。また、「田児の浦」か「田子の浦」か*5。
*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170921/1505965976
*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060530/1148955897 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060531/1149041720 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070125/1169693531 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080828/1219900795 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090213/1234550817 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100526/1274812895 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161126/1480171080
*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060816/1155720089 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160104/1451930756
*4:See eg. 長岡京小倉山荘「田子の浦に うち出(い)でてみれば 白妙(しろたへ)の 富士の高嶺(たかね)に雪は降りつつ」http://www.ogurasansou.co.jp/site/hyakunin/004.html
*5:「田子の浦に or 田子の浦ゆ ?」http://wakaotazunete.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/or-3211.html ここでは、『万葉』ヴァージョンが『新古今』ヴァージョンに引き摺られて、「田子の浦ゆ」になっている。