中村雄二郎

Via http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20170831/1504171081

朝日新聞』の記事;


哲学者の中村雄二郎さん死去 「共通感覚論」「術語集」
2017年8月30日21時56分



 著書「共通感覚論」「術語集」など幅広い分野での独自の論考で知られる哲学者で、明治大名誉教授の中村雄二郎(なかむら・ゆうじろう)さん*1が、老衰で26日に死去したと、所属していた明治大が発表した。91歳だった。葬儀は近親者で営んだ。後日しのぶ会を開く予定。

 東京生まれ。東大文学部を卒業し、文化放送を経て明大教授などを歴任した。パスカルデカルトを中心としたフランス哲学を出発点とし、60年代には人間の生の根源である情念に注目した論考を発表。70年代以降は、人間の認識のあり方を根源的に考え直す共通感覚論やトポス(場所)論などを展開した。

 生きた学問としての哲学を重視し、科学技術や生命倫理、21世紀の戦争やテロなどのテーマに積極的に発言した。

 演劇好きで知られ、劇評も手掛けるなど、従来の「哲学者」のイメージを超える活動で知識人らに大きな影響を与えた。著作の一部は中国や台湾でも翻訳出版された。

 おもな著作に、「感性の覚醒」「魔女ランダ考」「西田哲学の脱構築」「悪の哲学ノート」など。難解な術語をわかりやすく説明する入門書を数多く手がけ、84年に刊行された「術語集」は、哲学書としては異例のベストセラーとなった。仏哲学者ミシェル・フーコーの翻訳者としても知られる。93〜95年、本紙「こころ」のページにほぼ週に1回、「人類知抄 百家言」を連載した。
http://www.asahi.com/articles/ASK8Z5T8ZK8ZUCVL01T.html

術語集―気になることば (岩波新書)

術語集―気になることば (岩波新書)

術語集〈2〉 (岩波新書)

術語集〈2〉 (岩波新書)

人類知抄百家言 (朝日選書)

人類知抄百家言 (朝日選書)

上の記事に「60年代には人間の生の根源である情念に注目した論考を発表」とあるけれど、これは『現代情念論』に収録されている。また、『制度と情念と』。「ミシェル・フーコーの翻訳者」ということだけど、これは『知の考古学』と『言語表現の秩序』。何れも河出書房新社から出ている。翻訳としての質としては、先駆的な業績に付き物の問題を抱えているといえるだろう。これらは既に新しい世代の訳書が出ている筈。 中村雄二郎氏の思想を考える上で重要なのは『制度と情念と』という書名にあるように、先ず「制度」を思考していたということだろう。例えば、『近代日本における制度と思想』。明治大学でも所属は法学部で、哲学一般というよりは何よりも法哲学の先生だった。明治の学長になった土屋恵一郎氏*2の師匠でもある。また、これは功なのか罪なのかわからないけれど、栗本慎一郎*3法社会学の先生として明治の法学部に招いたのも中村氏。