自称中立の話

小池百合子*1の発言を巡って。まあ彼女が主犯というわけではないのだが。
東京新聞』の記事*2

関東大震災朝鮮人虐殺 小池都知事が追悼文断る

2017年8月24日 朝刊

 東京都の小池百合子知事が、都立横網町(よこあみちょう)公園(墨田区)で九月一日に営まれる関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付を断ったことが分かった。例年、市民団体で構成する主催者の実行委員会が要請し、歴代知事は応じてきた。小池氏も昨年は送付していたが方針転換した。団体側は「震災時に朝鮮人が虐殺された史実の否定にもつながりかねない判断」と、近く抗議する。 (辻渕智之、榊原智康)


 追悼文を断った理由について、都建設局公園緑地部は本紙の取材に、都慰霊協会主催の大法要が関東大震災の九月一日と東京大空襲の三月十日に開催されることを挙げ、「知事はそこに出席し、亡くなった人すべてに哀悼の意を表しているため」と説明。「今後、他の団体から要請があっても出さない」としている。

 追悼文は一九七〇年代から出しているとみられ、主催者によると確かなのは二〇〇六年以降、石原慎太郎猪瀬直樹舛添要一、小池各知事が送付してきた。

 追悼式が行われる横網町公園内には、七三年に民間団体が建立した朝鮮人犠牲者追悼碑があり、現在は都が所有している。そこには「あやまった策動と流言蜚語(ひご)のため六千余名にのぼる朝鮮人尊い生命を奪われた」と刻まれている。

 追悼碑を巡っては、今年三月の都議会一般質問で、古賀俊昭議員(自民)が、碑文にある六千余名という数を「根拠が希薄」とした上で、追悼式の案内状にも「六千余名、虐殺の文言がある」と指摘。「知事が歴史をゆがめる行為に加担することになりかねず、追悼の辞の発信を再考すべきだ」と求めた。

 これに対し、小池知事は「追悼文は毎年、慣例的に送付してきた。今後については私自身がよく目を通した上で適切に判断する」と答弁しており、都側はこの質疑が「方針を見直すきっかけの一つになった」と認めた。また、都側は虐殺者数について「六千人が正しいのか、正しくないのか特定できないというのが都の立場」としている。

 式を主催する団体の赤石英夫・日朝協会都連合会事務局長(76)は「犠牲者数は碑文の人数を踏襲してきた。天災による犠牲と、人の手で虐殺された死は性格が異なり、大法要で一緒に追悼するからという説明は納得できない」と話した。

関東大震災朝鮮人虐殺> 1923(大正12)年9月1日に関東大震災が発生すると、「朝鮮人が暴動を起こした」などのデマが広がった。あおられた民衆がつくった「自警団」などの手により、多数の朝鮮人や中国人らが虐殺された。通行人の検問が各地で行われ、殺害には刃物や竹やりなどが用いられた。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017082402000130.html

See also


籏智広太*3「なぜ小池知事は関東大震災朝鮮人虐殺の追悼文を断ったのか 都議会で交わされた”あるやりとり”」https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/why-denied
吉川慧「小池知事、関東大震災朝鮮人犠牲者めぐり持論⇒「虐殺の事実から目を背けるもの」と批判の声」http://www.huffingtonpost.jp/2017/08/26/yuriko-koike-great-kanto-earthquake-of-1923_a_23186257/
西村奈緒美「朝鮮人追悼式の主催者が抗議声明、小池氏の追悼文中止」http://www.asahi.com/articles/ASK8V4DV8K8VUTIL00P.html


先ず、どの記事でも指摘されているように、古賀俊昭*4という名前は主犯として記憶されなければならないだろう。
『ハフィントン・ポスト』の記事から引用してみる;


ヘイトスピーチに関する著作があるフリージャーナリストの安田浩一さん*5Twitterで「天災ではなく、デマによって多くの人が殺された『事件』は性格が違う。だからこそ歴代知事も独自に追悼文を寄せていたのではなかったのか」と指摘した。

「全ての人への追悼」は当然のこと。だが天災ではなく、デマによって多くの人が殺された「事件」は性格が違う。だからこそ歴代知事も独自に追悼文を寄せていたのではなかったのか。おそらく追悼文送付の有無だけでは済まない。朝鮮人虐殺の事実がなかったことにされるのではないのか。
安田浩一 (@yasudakoichi) 2017年8月25日
https://twitter.com/yasudakoichi/status/900970727494397952

歴史上の大規模虐殺の被害者数が大抵キリのいい概算なのは、事態の性質上、厳密に正確な人数を特定できないからで、政治的理由から虐殺を否定したい人間は、まず「犠牲者数の信憑性」に疑問を差し挟み、「数字が誇張されている」と騒ぎ立て、逆の被害者心理を醸成した上で「無かった」との結論に導く。
― 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) 2017年8月25日
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/900956635727667201

関東大震災での朝鮮人虐殺を否定するのは、もう100年近い周回遅れの言動だ。当時の作家や学者などの目撃談がある。そもそも事件の下手人は検挙されて裁判にかけられており、当然史料もある。また朝鮮人が襲来するとか毒をまいたとかの話がデマであることに覚醒した人もいる。芥川龍之介もその一人。 https://t.co/HdS9O6oC0j
― 住友陽文 (@akisumitomo) 2017年8月26日
https://twitter.com/akisumitomo/status/901279814283165697

政治性を排除することが、極めて政治的であることの好例。「震災の犠牲者すべてを追悼する」という一見中立的・公平にみえる言説が、朝鮮人に対する暴力を隠蔽する。実は全く中立でも公平でもない。最近、こういうことがあちこちで起きている。https://t.co/5AECmInlp2
想田和弘 (@KazuhiroSoda) 2017年8月25日
https://twitter.com/KazuhiroSoda/status/901095817343365120
関東大震災における朝鮮人虐殺については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060226/1140945531 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060308/1141787188 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060310/1141958983 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060416/1145158222 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100713/1278993463 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100903/1283488570 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100903/1283488570 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100905/1283658405 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110219/1298093110 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120316/1331857559 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150711/1436605074 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160418/1460945815も。

*1:http://www.yuriko.or.jp/ Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061121/1164082739 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091201/1259683304 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150213/1423756575 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150307/1425718006 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160705/1467732606 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160720/1468983337 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160722/1469152379 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160801/1470018564 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160804/1470275454 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160813/1471106464 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161002/1475384800 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161016/1476620302 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161214/1481686044 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170410/1491799584 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170509/1494299708 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170523/1495544657 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170612/1497284431 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170809/1502289649 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170824/1503594191

*2:Via http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20170824/1503533581

*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170224/1487910099 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170226/1488077743 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170228/1488291005 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170303/1488508478 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170305/1488726602 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170306/1488817967 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170308/1488946981 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170309/1489024533 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170310/1489109908 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170406/1491451136 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170518/1495124746 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170602/1496371973 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170808/1502206282

*4:http://www.kogatoshiaki.net/

*5:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130325/1364181903