「包摂と排除」(成田龍一)

長山靖生成田龍一改元100年――大正の「社会と文化」を語る 下」『毎日新聞』2012年3月15日


成田氏の発言;


災害が起きると、普段は見えない社会の断面が現れます。大正期を通じて進行したのは、地域の有力な商店主や工場経営者、古くからの住人といった「名望家」 の下で安定していた従来の地域秩序が壊れていくことでした。その動揺が関東大震災で一挙に表面化し、だから自警団によって地域を守るという動きになります。震災後は名望家の中身が在郷軍人会の長や、今の民生委員に当たる方面委員の長、青年団の長などに変わります。国家から任命された人が中心になるような再編成が進み、昭和の戦争期の町内会(隣組)の核になっていきます。
また、明治の統治は上からの一方的なやり方でしたが、大正期には「主張する民衆」が出てきて、彼らを包摂しながら支配するようになります。普通選挙法を制定すると同時に治安維持法を作り、従わない人は排除する。包摂と排除という新しい統治の仕方が震災後に一気に進んでいく。これは、参加する民衆が自発的に動員されていく昭和の体制につながります。
関東大震災と「虐殺」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060226/1140945531 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060308/1141787188 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060310/1141958983 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060416/1145158222 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100713/1278993463 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100903/1283488570 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100903/1283488570 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100905/1283658405 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110219/1298093110も参照のこと。