村上春樹と「ワム!」問題

村上春樹色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年*1から。「多崎つくる」と2歳年上の恋人「木元沙羅」の会話;


(前略)
「君の高校時代はどんなだったのかな?」とつくるは尋ねた。
「私はあまり目立たない少女だった。ハンドボール部に入っていた。きれいでもなかったし、成績もそんなに褒められたものじゃなかった」
「謙遜しているんじゃなくて?」
彼女は笑って首を振った。「謙遜は立派な美徳かもしれないけど、わたしには似合わない。ごく正直に言って、私はぜんぜん目立たない存在だった。学校というシステムにあまり合わなかったんだと思う。先生に可愛がられることもなく、下級生に憧れられることもなかった。ボーイフレンドなんて影もかたちもなかったし、しつこいにきびにも悩まされていた。『ワム!』のCDも全部持っていた。母親の買ってくれる白いコットンのさえない下着を着ていた。でもそんな私にも良い友だちは何人かいた。二人くらいね。あなたの五人組のように緊密な共同体とまではいかなかったけれど、それでも心のうちを打ち明けられる親友だった。だからそんなぱっとしない十代の日々を、なんとかこともなく乗り切ることができたのかもしれない」
(後略)(pp.254-255)
ワム!*2のCDを持っていることは、「母親の買ってくれる白いコットンのさえない下着を」着けることと同じぐらいイケてないことだったのか。