「破裂」の原因

承前*1

ヴィニールがたんに「破れた」のではなくて「破裂」したのは何故か。
茨城新聞』の記事;


大洗研被ばく、ガス発生で圧力上昇か 核物質容器内で26年保管

6/9(金) 4:00配信

茨城新聞クロスアイ


大洗町成田町の日本原子力研究開発機構(原子力機構)大洗研究開発センターで作業員が内部被ばくした事故で、原因となった放射性物質の貯蔵容器は1991年に密封されて以来26年間、一度も開封されていなかったことが8日、原子力機構への取材で分かった。原子力機構は放射性物質を入れたポリエチレン製容器を包んでいたビニール製バッグが破裂した原因は「調査中」としているが、専門家は放射性物質から発生したガスによる容器内の圧力上昇や、放射線を浴び続けた容器が劣化していた可能性を指摘している。

事故は6日午前、原子力機構の50代の男性職員がステンレス製の貯蔵容器のふたを開けた際に発生。プルトニウムとウランを含む核燃料物質が入ったポリエチレン製容器を包むビニール製バッグが破裂し、約300グラムあった粉末状の核燃料物質の一部が飛び散って作業員が被ばくした。

原子力機構によると、飛散した核燃料物質は91年にポリ容器に入れ、その外側を二重のビニール製バッグで密封した上で保管されてきた。途中で開封された記録は現時点で見つかっておらず、密封した当時の状態が26年間保たれてきた可能性が高い。

破裂の原因について、県原子力安全対策委員会の委員も務める東京大大学院の寺井隆幸教授(核燃料工学)は「プルトニウムとウランは時間が経つと原子核が崩壊し、ヘリウムガスが発生する。ガスで容器内の圧力が上昇し、貯蔵容器のふたを開けた際に圧力のバランスが崩れ、破裂した可能性が高い」と指摘する。

また、プルトニウムが出すアルファ線ガンマ線を浴び続けたポリ容器やビニール製バッグ自体が劣化していた可能性も挙げ、「ポリ容器の劣化で生じるメタンガスが、ビニール製バッグ内の圧力上昇につながったとも考えられる」と付け加えた。

寺井教授は、今後同様の作業を行う際には気密性の高いグローブボックスのような設備を使うことや、全面マスクを着用することなどを課題に挙げた。

事故が起きた同センターの「燃料研究棟」は、プルトニウムやウランを用いた新型燃料の研究開発が行われてきたが、現在は廃止措置に向けた準備が進められている。核燃料物質の点検作業は、原子力規制委員会原子力機構に対して核燃料物質の保管方法を改善するよう指示したことの一環で、同センターでも2月以降進められてきた。

原子力機構によると、今回ビニール製バッグが破裂した核燃料物質と計量管理コードが同じものは計21個あり、このうち1個目の容器を調べようとした際に事故が起きた。(戸島大樹)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170609-00000004-ibaraki-l08

朝日新聞』の記事;

ビニール突然破裂「想定外」 内部被曝招いたずさん管理

6/8(木) 5:01配信

朝日新聞デジタル



 日本原子力研究開発機構が起こした国内最悪の内部被曝(ひばく)事故。これまで何度も問題になってきた、原子力機構による放射性物質のずさんな管理が再び繰り返された。作業員が吸ったプルトニウムは体内に長い間とどまり、がんのリスクを高めると指摘されている。

 被曝(ひばく)事故があったのは、26年前に封がされた保管容器の中身を確かめようとした時だった。

 原子力機構の大洗研究開発センター(茨城県大洗町)にある燃料研究棟。6日朝、作業にあたる職員5人が分析室に直径10センチほどのステンレス製の保管容器を持ち込み、分析用の作業台に載せた。保管容器の中には、プルトニウムとウランなどの酸化物が入ったポリ容器が、二重のビニール袋に包まれて入っていた。

 午前11時15分ごろ、50代の男性職員が6本のボルトを緩めて保管容器のフタを開けると、突然、ビニール袋が破れ、中にあった放射性物質が飛び散った。この職員は2万2千ベクレルのプルトニウムを吸い込み、近くにいた3人の肺からも放射性物質が検出された。保管容器は1991年にフタを閉じた後は、一度も開けたことがなかったという。

 原子力機構は「この作業でビニールが破れるとは想定していなかった」と説明。作業マニュアルでも、この作業を密閉された特殊な箱の中ではなく、前面のガラスの一部が開いた状態の作業台で行う手順にしていた。

 職員が付けていたマスクはフィルター付きで口と鼻を覆うタイプだった。どのような経路で吸い込んだかは不明だが、マスクと顔の間に隙間があったり、放射性物質がまだ浮遊しているのにマスクを外したりした可能性が考えられている。顔全体を覆うタイプのマスクを使っていれば、内部被曝は防げたかもしれない。

 原子力機構によると、現場となった燃料研究棟は74年に完成。その3年後からプルトニウムを使った試験が始まった。高速増殖原型炉「もんじゅ」の新型燃料などを研究開発していたが、役目を終え、13年度に廃止の方針が決まった。

 施設を廃止した後、放射性物質を廃棄物として処理していくには、その種類や量、状態を確認する必要がある。そこで原子力機構は今年から、施設に大量にある保管容器の状況を確認する作業を進めていた。原子力機構は「作業の手順は計画通りで、作業員の装備にも問題はなかった」と説明する。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170608-00000012-asahi-soci

もんじゅ*2関連の施設だったわけだ。
『ガーディアン』が掲載したAssociated Pressの記事でも「もんじゅ」が言及されていた;

JAEA has a poor safety record at another site – Monju, a plutonium-burning fast breeder reactor that it oversees. There was a major accident there in 1995 and has since hardly operated. The government recently decided to close the facility.

Japan’s possession of large plutonium stockpiles, from the country’s spent-fuel recycling program, has faced international criticism. Critics say Japan should stop extracting plutonium, which could be used to develop nuclear weapons.

To reduce the stockpile, Japan plans to burn plutonium in the form of Mox fuel – a mixture of plutonium and uranium – in conventional reactors. But the restarting of halted nuclear plants has proceeded slowly amid persistent anti-nuclear sentiment since the 2011 Fukushima nuclear reactor meltdown caused by a massive earthquake and tsunami*3.


“Japan nuclear workers inhale plutonium after bag breaks” https://www.theguardian.com/world/2017/jun/08/japan-nuclear-workers-inhale-plutonium-after-bag-breaks