蓮實重彦先生*1の『伯爵夫人』はまだ買ってもいないのだった。
分部麻里「「嘘を嘘と示せる自信を」 東大元総長の三島賞作家」http://www.todaishimbun.org/otameshi_interview20170317/
期間限定公開だって。野球に関するネタがないのはインタヴューした方が野球に興味がなかったか、それともただたんにインタヴューしたのがシーズン・オフだったからなのか。
この戦時下の『風と共に去りぬ』*2の話は知らなった。これ自体が映画的な話ではあるけれど。
――22年ぶりに小説『伯爵夫人』を発表した理由は理由はありません。心に浮かぶものを書きとめているうちに、小説が書けてしまったのです。というのも、フランスの作家のフローベールを研究して『「ボヴァリー夫人」論』(筑摩書房)を仕上げた後、私は、年来の企画である米国の映画監督を対象とした、『ジョン・フォード論』に取り掛かろうとしました。しかしこの分析方法が似ていて二番煎じのように思えたので、作業をいったん中断しました。すると、どこからか「伯爵夫人」が私に訪れたのです。最初の一文を書いたら後はすらすらと。1年もかからずに書き上げてしまいました。
第2次世界大戦中に「この戦争は間違っている」と感じていた人がいたことを書きたかったのかもしれません。1941年12月8日に、日本は米国・英国に宣戦布告しました。ちょうどその時東大を目指す高校生だった、ジャズ評論家の瀬川昌久さんという方がおられます。瀬川さんは戦争が始まった12月8日の真夜中過ぎに、米国の音楽であるジャズの『愛のカクテル』という曲を大音量で流した。東大を目指しているが、戦争がどうなるかも分からない。そういうやるせない思いをぶつけたのでしょう。彼は戦時中ずっとジャズを聴いていたといいます。
また、これは正確に調べ切れていないのですが、43か44年に法学部の25番教室で、米国映画『風と共に去りぬ』が上映されたそうです。戦時中ですよ。このフィルムは軍部が接収したものでしょうが、敵国の映画をなぜ東大生に見せたのか。目的は分かりませんが、もう戦争には負けるから米国のことを少しは知っておけ、と考えた上層部の人がいたのでしょうか。
社会全体が米国憎しと思っていたのではなく、この戦争は間違いだと考える人も確実に存在していました。戦時下の日本は奇妙に成熟していたのです。映画の件を考えても、当時の日本は捨てたものではないと思いました。
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2004/02/28
- メディア: DVD
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
また、
――創造性を大学で伸ばすことは可能だと思いますかできると思います。研究より、教育の方が大切なのです。他人との競争の中で自分は秀でていると感じられる教育が必要。そのためには学生を何かに没頭させ、知らぬ間に自分の限界を超えて、他の人よりも前を走っているような状況に導くことが重要なのだと思います。
ともおっしゃっている。
文科省が「何の役に立つか」という社会的要請の観点を重視するのも問題です。ノーベル賞を受賞された大隅良典先生にしても、自分の純粋な好奇心から好きなことをやって、それが評価されている。いつか何かの役には立つだろうが、当面の役には立たない。自分の研究が社会の役に立つかなんていったい誰に分かるのでしょうか。
*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20050630 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060313/1142223339 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060808/1155048808 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070222/1172164952 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080130/1201705768 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080320/1205977471 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080519/1211163378 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081031/1225471762 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081117/1226893758 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090322/1237741323 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100219/1266520878 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100226/1267115264 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101010/1286679169 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101127/1290832882 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101220/1292861075 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110129/1296321747 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110711/1310400277 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110713/1310486787 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110718/1310962569 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20111024/1319430943 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120504/1336116305 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120711/1341932665 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130901/1377964746 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140825/1408943394 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140830/1409379675 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150415/1429066617 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160220/1455936290 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160407/1460055338 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160517/1463502466 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160627/1467026912
*2:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160508/1462659002 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160701/1467386724