『はじめて学ぶ生命・環境倫理』

はじめて学ぶ生命・環境倫理―「生命圏の倫理学」を求めて

はじめて学ぶ生命・環境倫理―「生命圏の倫理学」を求めて

先月読了した本。

徳永哲也『はじめて学ぶ生命・環境倫理 「生命圏の倫理学」を求めて』ナカニシヤ出版、2003


はじめに


序章 科学技術社会と倫理


第I部 生命の倫理
第1章 今日の医療と患者
第2章 人工妊娠中絶
第3章 子を産む技術・子を選ぶ技術
第4章 死と末期医療
第5章 先端医療・遺伝子・クローン
第6章 いのちを取り巻く現代社


第II部 環境の倫理
第7章 地球環境問題と資本主義
第8章 環境保護自由主義個人主義
第9章 地球環境保護の倫理
第10章 開発と環境
第11章 経済生活と環境
第12章 自然と人間

終章 「生命圏の倫理学」へ



文献ガイド
おわりに
索引

副題にある「生命圏」を巡って;

「環境」といえば周りの自然環境がまず頭に浮かぶが、人間にとっては自らの身体そのものが生きる力を守る環境である。この人間の内的環境である「いのちとからだ」と、他方で外的環境である「自然と地球」を、水や空気や有機物が循環する「生命圏」としてトータルに捉え、その持続・維持を考える、という方向で倫理や経済を考察していく必要があると考えている。(略)遺伝子組み換え作物の問題は、その代表例である。「生命圏」とうう言葉は、環境倫理の生命中心主義や生態系中心主義と近い文脈で使われることがあるが、著者自身は「人間生命体とそれを支える周辺条件全体」という意味で、生命倫理環境倫理の統合理論を導くキーワードとして使いたいと考えている。(終章、p.229)
Leben/vie/lifeは「生命」のほかに「生活」という訳語が当て嵌まる側面もあり、この両者が相俟って、トータルな〈生〉が構成されるといえるだろう。著者に対する不満としては、この「生活」という側面が等閑視されているのではないかということがある。その結果としてオミットされたであろう〈生活環境主義〉という環境観については、例えば、鳥越皓之氏の『環境問題の社会理論』*1、『環境とライフスタイル』、『環境社会学の理論と実践』、『環境社会学』(放送大学)、『花をたずねて吉野山*2などをご覧になられたい。
環境問題の社会理論―生活環境主義の立場から

環境問題の社会理論―生活環境主義の立場から

環境とライフスタイル (有斐閣アルマ)

環境とライフスタイル (有斐閣アルマ)

環境社会学の理論と実践―生活環境主義の立場から

環境社会学の理論と実践―生活環境主義の立場から

環境社会学 (放送大学教材)

環境社会学 (放送大学教材)

花をたずねて吉野山―その歴史とエコロジー (集英社新書)

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