「南馬宿村」?

「「南馬宿村HP」の「村八分」解説が怖い 架空自治体なのに本気にする人が出た理由」http://www.j-cast.com/2016/09/27279115.html
Kikka*1「自称・秋田県南馬宿村役場が「村八分になってしまったら」というページを公開? 県は「存在しない村」と否定」http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1609/27/news091.html


「南馬宿村」公式サイト*2問題。架空の村なのに実在の村(の公式サイト)だと信じ込んでしまった人が少なからずいたという。まあ、本物の自治体の公式サイトが.comというドメインになっていることは、普通に考えるとないよね。
〈田舎〉に対する差別遊び。内閉的な社会への諷刺或いは嘲り、ということになるだろう。多くの人が怖がったという「村八分」だけれど、これは現実のムラ社会でかつて行われていた(かも知れない)/今も行われている(かも知れない)「村八分」を反映したものというよりは、もっと多くの人にとって身近な、学校の学級とか職場の小集団といった近代的/現代的な閉鎖的集団において起こりうるイジメとかハラスメントといった現象を、ムラ社会に投影しているわけだ。国内オリエンタリズム問題。だから、秋田県の人が怒るのも無理はない。多分、偶々「秋田県」だったのであって、本当は(田舎っぽかったら)何県でもよかったのでは? 全く根拠のない推測に過ぎないけれど、作った人は、学校や職場でいじめられたルサンティマンはあるかも知れないけれど、実際のムラ社会には興味がないのではないか。行政村と自然村の区別にも無頓着であり、日本のムラ社会が大まかに東北型と西南型に分けられるということ(Cf. 福武直『日本の農村』)も知らない、或いはあまり気にしないのだろう。東北型は垂直的、西南型は水平的。東北型では、地主‐小作関係、本家‐分家関係といったヒエラルキーが明確であり、「村八分」のようにムラ人が勝手に逸脱者に制裁を加える余地はない。制裁を発動するのは、地主とか本家といった上位者であって、下の者ではない。対等なイエが張り合いつつ共存する西南型の方が「村八分」などは起こりやすいといえるかも知れない。また、今気づいたのだが、いじめが問題になる集団というのは東北型よりも西南型のムラ社会に近いところがある。水平的な集団はいじめと親和性があり、(東北型のような)垂直的な集団はパワハラ*3と親和性があるといえるのでは? 話を戻せば、もっと悍ましいこと、或いはもっと素晴らしいこともある筈なのだが、まあそういうことは興味ないのだろう。

日本の農村 第2版 (UP選書 82)

日本の農村 第2版 (UP選書 82)

ところで、かなり以前に(比喩的な意味ではない)「村八分」を採り上げたことがあったのだった*4。集落の3分の1の世帯が「村八分」に処せられているという事件。これは危機に陥った共同体の自己免疫反応という感じ。