「産婆」（メモ） - Living, Loving, Thinking, Again

作者: ジョルジョ・アガンベン,岡田温司,多賀健太郎
出版社/メーカー: 平凡社
発売日: 2011/10/07
メディア: 単行本（ソフトカバー）
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ジョルジョ・アガンベン『開かれ』にヴァルター・ベンヤミン *1の「一方通行路」からの引用があった。孫引きしたくなった；

性が充たされることで、男はみずからの神秘から解き放たれる。ただし、この神秘は性欲にあるわけではなくて、性欲の充足にある。そしておそらくは、その充足においてはじめて、この神秘は――解かれるのではなく――断ち切られるのだ。それは男を生に結びつけている絆に喩えることができる。女がこの絆を断ち切ると、男は、死に対して自由になる。というのも、その生が神秘を失ったためだ。これによって男は、新たに生まれ変わることになる。そして恋人が男を、母親の呪縛から解くように、女は男を、文字どおり母なる大地から引き離す。この女こそ、自然の神秘から織りなされる臍の緒を断ち切ることができる産婆なのだ。（Cited in p.145）

アガンベン、パラフレーズして曰く、

（前略）人間を生に結びつけている秘密の絆を――ほどくのではなく――断ち切るのは、すっかり自然に属しているようにみえながら、むしろいたるところで自然をはみだしている要素、すなわち性的充足なのである。性的快楽の土壇場で、神秘から解き放たれ、いわば自然ならざるものを認識することになる生というこの逆説的なイメージのうちに、ベンヤミンは、もうひとつの新たな人間ならざるものの象形文字（hieroglyph）のようなものを読みとったのだ。（ibid.）