原武史on「生前退位」

承前*1

石井紀代美「<生前退位 こう考える> 原武史さん」http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016073102000100.html


今上天皇が「生前退位」を希望しているという〈噂〉だが、数年前に天皇が歿後の「火葬」を希望したこと*2の延長にあるという見解。要するに、(明治以降)「あまりにも天皇の権力が大きくなりすぎ、戦後も解体されないまま残ってしまったものに、メスを入れようとしているのではないでしょうか」。
ただ、「生前退位」を実現するには皇室典範を改正する必要があり、そうなると天皇の「国政に関する権能」を否定した日本国憲法第4条に抵触するというのはどうなのだろうか。原武史*3皇室典範を〈法律〉だと考えている。まあ法律なのだろうけど、そもそも皇室典範を刑法とか民法とかと同等の意味における〈法律〉であると見做すことはできるのだろうか、或いは見做していいのだろうか。皇室典範というのは皇室という氏族の家憲であって、それが規律しているのはあくまでも皇室の私的な側面でしかないのだ。家憲がそのまま国法になるというのは家産制国家であろう。そのようなことが現代民主制国家において許されるのだろうか。また、「生前退位」を実現するのに皇室典範の改正も必要ないかも知れない。何しろ、皇室典範は「生前退位」を明確に禁止していないのだから。これに比べれば、女帝の実現の方がはるかに困難だろう。