「ひとり言」など

「44年刑務所で過ごした男性の目に現代社会はどう写るのか」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160622-00010007-giz-prod&pos=2


「警察官に対する殺人未遂」の咎で刑務所に入り、最近44年ぶりに娑婆に帰ってきたOtis Johnsonという方について。ところで、「殺人未遂」で懲役44年というのはあまりに重刑であるような気がする。彼自身が黒人であり、1970年代初めに服役が開始されたという時期的な要素を勘案すると、(例えば)ブラック・パンサー*1のような政治犯だったのではないかと思った。勿論、根拠は全然ないのだけど。
さて、


実に44年間、外の世界から隔離されて生きてきた彼がよく行く場所はタイムズ・スクエア。そこに行き交う人々の「クレイジーな様子」に驚いてばかりだと言います。

彼が刑務所に入る70年代には既にタイムズスクエアビルボードで溢れかえっていました。しかし彼が驚くのは建物の窓に写る広告の映像。「窓にビデオなんて見たことなかったよ。窓に写るのは、横切る人々の姿だけだった。」と語ります。そこが新鮮なのか、と彼の驚きに私たちも驚きますね。

テクノロジーの影響はビルや広告だけじゃありません。Johnsonさんは道行く人々の姿にも驚いているようです。刑務所から44年ぶりに外の世界に出た時に、たくさんの人が歩きながら「ひとり言を言っている」のに驚いたとのこと。そう、ひとり言とはマイクのついたイヤホンで通話をしている人々のことです。

日本ではそれほどメジャーじゃないですが、アメリカでは電話を耳に当てて話している人よりもイヤホンをして通話している人の方が多くなっています。耳からワイヤーをぶら下げて会話をしている人たちが「皆CIAに見えた」と言うJohnsonさん。70年代じゃなくても、仮に90年代からタイムスリップした人も驚く光景ですよね。

昔はコイン式だったニューヨークの地下鉄も今では磁気テープのついたカードになっています。スイスイと人々が通過するのを横に何度も何度もカードをスワイプするJohnsonさん。

「ひとり言」ということだけど、20年くらい前、ようやくPHPとかケータイとかが一般に普及し始めていた頃、私も驚いたよ。一人でしゃべりながら歩いてる! って。当時の年寄りによるケータイに対する批難とか嘲笑にはかなりこの「ひとり言」への違和感が含まれていた筈。また、一時期、「イヤホン」しながら道を歩いている中年男はみんな公安刑事に見えたということがあった。もし日本で、44年間ムショ暮らしをして娑婆に出てきた人が鉄道駅に来ていちばん吃驚するのは、鋏を持った改札係の姿が見えず、みんなカードをかざして改札を通過していることだろう。