文學界じゃいけないの?

林修氏が東大生の弱点を指摘「『群像の感覚』を身に付けないと生きていけない」」http://news.livedoor.com/article/detail/11692259/


「26日放送の「林先生が驚く初耳学」(TBS系)で、東京大学法学部卒の林修氏が、東大生の弱点を指摘する場面があった」んだって。
曰く、


さらに林氏は、社会に出る前にやっておくべきこととして「失敗の実験」、そして、社会に出た後に欠かせない力として「群像の感覚」を提示した。これは、多くの人の中に自らを置くことで、「自分がどういう状況で、どの役だったらできるのか」を客観的に判断する力だ。

東大生は勉強ができて、ずっと褒められてきたので、この「群像の感覚」が乏しいという。そのため、東大生の肩書きがあっても、無理やり自分を押し通し、周囲の信頼を勝ち得ていないケースが多々あるそうだ。

林氏は「皆さんが持っている能力、決められた試験をキチンと解いて、そして穏やかにやっていきたいなら、もう公務員しかない」と断言する一方で、そうでないなら「群像の感覚」を身に付けないと社会で「生きていけない」と強調し、居並ぶ東大女子をうなずかせていた。

「群像の感覚」という言葉を読んで、文學界の感覚じゃ駄目なの? 新潮の感覚はどうなの? すばるの感覚は? 文藝の感覚は? と思いついてしまった。それはともかくとして、言いたいことはわかるけど、こういう意味合いで「群像」という単語を使うのは(私の日本語感覚からすると)かなりの違和感がある。「群像」というのは英語に直訳すればcollective portraitということになる。集合的な肖像、単数ではなく複数の人物の肖像。私の感覚だと、「群像」という言葉を発する人は「群像」の外側にいる。「群像」を「群像」として認識させるのはタブローからの距離なのだ。だから、「多くの人の中に自らを置くこと」というのはちょっと違う。じゃあ、何といえばいいのか。東大経済学部を卒業した柄谷行人*1のターミノロジーでいえば、(「共同体」ではない)「社会」の感覚ということになるのだろうか(例えば、蓮實重彦氏との対談本『闘争のエチカ』を見られたい)。
闘争のエチカ (河出文庫―BUNGEI Collection)

闘争のエチカ (河出文庫―BUNGEI Collection)

ところで、直接知っている東大系の人に対しては、「無理やり自分を押し通」すというのとは全く逆の印象を持っている。腰の低さと下の者への気配り。これって、高級官僚になるためのライト・スタッフだよね、俺みたいに感情に溺れてキレるというようなことばかりじゃ官僚なんて務まらないよね、と思った。因みに、こういう印象を抱いたのは官僚予備校としての法学部ではなく文学部系の人たちに対してである。ちょっとずれるけれど、京都大学出身の上野千鶴子先生も東大生の他者に合わせて空気を読む能力に感嘆していたと思う(遺憾ながら出典は忘れてしまったけれど)。

*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060509/1147176621 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061102/1162433731 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061111/1163268262 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070301/1172719278 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070327/1175006715 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070502/1178032169 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070928/1190960267 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071207/1196999436 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080130/1201705768 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080222/1203653046 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080315/1205550667 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080618/1213764180 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080622/1214152497 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081111/1226421199 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081117/1226893758 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090218/1234940110 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090227/1235705016 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091125/1259121898 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091126/1259201785 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091127/1259318413 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100219/1266587087 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100325/1269541570 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100326/1269582083 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100415/1271309817 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101019/1287455134 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101230/1293678959 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110120/1295514427 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110427/1303918915 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110509/1304911992 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110609/1307596346 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110701/1309495567 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110709/1310185825 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110711/1310356905 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130304/1362367180 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130306/1362536717 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130415/1365992435 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131123/1385220562 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140224/1393263672 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20151229/1451365219