虫のせいかも知れない

最近、兵庫県加古川市で75歳の男が煙草のポイ捨てを注意した小学1年生の首を絞めるという事件が起こった*1。こうした〈野蛮な老人〉はけっこう注目を集めているようだ。


「「75年も生きて何を学んできたのだ」 「注意に逆ギレ6歳の首絞め」老人に批判殺到」http://www.j-cast.com/2016/03/22262015.html?p=all


曰く、


例えば、16年3月4日には、市バスの男性運転手(32)に小枝を投げつけて右目にけがをさせたとして、京都市中京区の男(65)が公務執行妨害容疑で逮捕されている。男は同日13時ごろ、中京区のバス停「堀川三条」で降車。その際、停車位置が歩道の縁石に近く、降車しにくかったと腹を立て、街路樹の枝を折って運転手に投げつけたという。

また16年1月27日には、他人にわざと車でぶつかって重傷を負わせたとして、山梨県忍野村に住むパートの男(63)が傷害容疑で逮捕されている。男は同日15時すぎ、灯油を購入するため同県富士吉田市の給油所に来店。後から訪れた男性(66)が男に気づかず先に給油しようとすると、軽乗用車に乗り込んで給油中の男性にぶつけ、両足骨折の重傷を負わせた。

「物理攻撃」のみならず、暴言事例も多い。15年10月15日、東京都世田谷区の自称・無職男(78)が同区の路上で、行きつけの喫茶店で働く20代女性に結婚を申し込む手紙を渡した。しかし、読まずに返されたため激高、その場で「ぶっ殺してやる」と女性を脅した。男は脅迫容疑で警視庁に逮捕されている。

「キレる老人」が多いことは、統計でも裏付けられている。 JR3社や日本民営鉄道協会は15年7月6日、全国29の鉄道事業者で1年間に発生した暴力行為をまとめた「鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について」(2014年度)を発表した。それによると、加害者の年齢で最も多かったのは60代以上(21.9%)で、5年連続して最多だ。

そして、『週刊東洋経済』(3月19日号)は、「人に注意されたり、何かを教えられたりするのを嫌がる人が多い」「高齢者のめちゃくちゃな要求なんて日常茶飯事」いうある鉄道会社社員の証言を紹介している。

ここで挙げられている事例のジェンダー・ギャップも指摘しておくべきだろう。挙げられているのは爺ばかりで婆はいない。


「駅員への暴力「60代以上」がトップ 結果にネットでは「納得」の声」http://www.j-cast.com/2014/08/03211635.html?p=all


曰く、


JR3社や日本民営鉄道協会らは2014年7月7日、13年度の「鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について」の統計を発表した。これは全国29の鉄道事業者で1年間に発生した暴力行為をまとめたものだ。

13年度に発生した鉄道係員(駅員や乗務員など)への暴力行為は760件だった。過去最多だった11年度の911件から、12年度の828件、そして今年と、着実に暴力行為は減少している。発生件数が多いのは月別では7月、曜日では土曜日、時間帯では深夜(22時〜5時)だった。加害者の飲酒の有無は「飲酒あり」が57.1%で、11年度の57.7%、12年度の59.8%とほぼ横ばいだ。発生場所の統計では改札(39.7%)、ホーム(30.3%)、車内(16.2%)と続く。

加害者の年齢は「60代以上」が23.4%で、5年連続のトップとなった。ここ数年19〜20%を行き来していたため、割合としては微増となる。2位の「50代」も前年度から2%増えた。両者をあわせると、中高年による暴力行為は43.4%にのぼる。

勿論、加齢とともに暴力的になるということではなく、人口の高齢化のために60歳以上のヴォリュームが増大しているためだろう;

60代の人口は増えつつある。第1次ベビーブームで生まれた「団塊の世代」(1947年〜49年生まれ)は、2014年までに65歳を迎える。そのため2月現在の総務省「人口推計」では、「65歳以上」の人口が約3227万8000人にのぼった。前年同月から110万人以上増加していて、総人口の4人に1人以上が「65歳以上」になる。

年配者の暴力行為は、鉄道に限った話ではない。警視庁の「平成25年の犯罪情勢」によると、13年の暴行検挙数は、各年代のうち「65歳以上」だけが前年度より増加(1.0%)した。同様に傷害の検挙数も増え、前年比4.5%増となっている。

ところで、平均寿命が40代の時代(社会)ならともかく、平均寿命が80を超えている社会で、60以上を一律に「高齢者」と呼ぶのは違和感がある。その違和感は18歳未満を一律に「児童」と呼ぶことへの違和感にも似ている。せめて、60代、70代、80代という10歳区切りのカテゴリーでいうか、或いは後期高齢者(75以上)とそれ以前を区別するかはしてほしい。
キレる老人というのは高齢者の「ニート」性と関係があるのかも知れない*2。60代のうちはまだ現役として働いている人も多いが、加齢とともに企業とか学校といった社会的な帰属先と切れていくというのも事実だろう。また、高齢者は若年層とともに独居が多い年齢層でもある。
さて、年齢には関係なく、突発的な暴力はtoxoplasma gondiiという(そもそもは猫の)寄生虫が人間の脳に寄生するためである可能性が高いという研究が最近報告されている。シカゴ大学Royce Lee博士*3らの研究。


Nicola Davis “Brain parasite could be behind rage disorder in adults” https://www.theguardian.com/science/2016/mar/23/brain-parasite-toxoplasma-gondii-could-be-behind-rage-disorder-in-adults


少し切り取ってみると、


According to new research, adults who have intermittent explosive disorder (IED) - a psychiatric condition in which violent outbursts of anger and cursing erupt in response to apparently trivial irritations - are more likely to have been infected with toxoplasma gondii.

“The kind of triggers are usually social provocations,” said Dr Royce Lee, an author of the study from the University of Chicago. “In the workplace it could be some kind of interpersonal frustration, on the road it could be getting cut up.”

A common parasite, toxoplasma gondii reproduces within cats and is spread in their faeces. It can enter humans through the food chain in raw or undercooked meat, contaminated water or unwashed vegetables that have come into contact with the parasite.

It is thought that up to a third of the British population have been infected with toxoplasma gondii - a parasite that lurks in the tissues of the brain. While generally considered to be harmless, toxoplasmosis in pregnant women has been linked miscarriages, stillbirths and congenital defects in babies, and can cause serious problems in those with weakened immune systems.