自然は技術を模倣する(坂本賢三)

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160309/1457492744に関連して。

新・岩波講座 哲学〈5〉自然とコスモス

新・岩波講座 哲学〈5〉自然とコスモス

坂本賢三*1コスモロジー再興」(in 『新・岩波講座哲学5 自然とコスモス』、pp.1-32)からメモ。


(前略)技術は自然を模倣すると言ったのはアリストテレスであるが、技術は自然を模倣するとき、その構造ではなく機能を模倣するのである。乗物は足の延長であると言われるが、自動車も電車も足の構造に似ていない、移動する機能を模倣しているのである。飛行機の構造は鳥に似ていない。空を飛ぶ働きが模倣されているのである。
しかし実は技術が自然を模倣するということはできない。歴史を見ると、人間は技術をモデルにして自然を認識してきたのであって、この点では、自然が一次的で技術は二次的なものだという通説に反対したプラトンの方が正鵠を得ていると思われる。人類は蒸気機関の開発によってエネルギーの存在を知り、コンピューターをモデルにすることによってDNAの機能を知ったのである。ピアノの発明によって聴覚のメカニズムがわかり、ラジオの発明によって宇宙電波の存在を知ったのであって、その逆ではない。たしかに後ろから見るとカメラは目の構造を模倣したかのように見えるが、実はカメラによって目の働きが認識できたのである。気象現象の中に断熱膨張を見てサイクル論ができたのではなく、熱工学で断熱膨張の概念ができてはじめて気象の中にそれを発見したのであった。(pp.16-17)