「読む」(メモ)

生きる哲学 (文春新書)

生きる哲学 (文春新書)

若松英輔『生きる哲学』*1第8章「感じる 神谷美恵子の静かな意思」の冒頭に曰く、


「存在する」ことは五つの感覚で確かめることができる。現代人の多くはそう信じている。だがそもそも人間の感覚は、五感を超えていることを忘れている。五つの感覚が感覚の一部でしかない証左は、私たちが日常使っている表現に満ちあふれている。
たとえば、直観的に理解することを「読む」という。未来も、空気も、また心さえ読むという。来るべきときも雰囲気も、心もまた、見ることも、さわることもできない。それにもかかわらず、私たちはその営みを自然に「読む」と呼ぶ。
読心が、mind readingの訳語であることが示しているように、これは日本文化特有の現象ではない。だが、読心という言葉が出現してから、私たちが心を読むようになったのではない。事実、「読」の字にはもともと、「わかる」「よみとる」の意がある。(pp.144-145)
「見ることも、さわることもできない」けれど、キザシ(兆し、萌し、徴し)はあるということになるだろう。キザシを読むこと、これが占い、医学的診察、犯罪捜査といった、あらゆる動態的読みの基礎となる。中井久夫分裂病と人類』*2山口昌男『流行論』、ピエール・ギロー『記号学』を取り敢えずマークしておく。
分裂病と人類 (UP選書 221)

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流行論 (週刊本)

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記号学―意味作用とコミュニケイション (文庫クセジュ 514)

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