NHKの報道;
何だか、この厚労省のコメントを巡って、炎上が起きているらしいのだ*1。「現代版マリー・アントワネット」だとかね*2。やはり「健康への関心を高めてほしい」という如何にも上から目線な説教口調がまずかったのだろう。玄米は完全食品なので、白米じゃなくて玄米を食べれば栄養のバランスはよくなる。厚労省が貧乏人は玄米を食え! とコメントしたら、さらに炎上しただろうか。
所得低いほど栄養バランスよい食事取れず
12月13日 4時39分
所得が低い人ほど、コメやパンなど穀類の摂取量が増える一方で、野菜や肉の摂取量が少なく、栄養バランスのよい食事が取れていないことが、厚生労働省の調査で分かりました。
厚生労働省は、国民の健康状態などについて、毎年調査を行っていて、去年は、回答を得られた3600世帯余りについて結果を分析しました。
それによりますと、コメやパンなど穀類の1日の摂取量は、所得が200万円未満の世帯では、男性は535グラム、女性は372グラムと、所得が600万円以上の世帯より20グラムから40グラム多くなっていました。
一方、野菜の摂取量は、所得が200万円未満の世帯では、男性は253グラム、女性は271グラムと、所得が600万円以上の世帯より40グラムから70グラム少なくなっていました。
所得の低い人は肉の摂取量も少なく、所得が低い人ほど栄養バランスのよい食事が取れていないことが分かりました。
また、健康診断を受けていない人の割合は所得が600万円以上の男性では16.1%だったのに対し、所得が200万円未満の男性は42.9%と、所得が低くなるほど高くなっていました。
厚生労働省は「所得が低い人は栄養バランスのよい食事をとる余裕がなくなっているのではないか。食事の内容を見直すなど健康への関心を高めてほしい」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151213/k10010339431000.html
さて、今年になって、戦前の日本の農民の食生活調査の話を読んだのだが、肝心なその出典を忘れてしまった。その内容は、今回の厚労省調査をさらに極端にした感じ。勿論野菜が不足しているということはないけれど、魚は殆どハレの食事のために取っておかれる。すごく単純化すると、日常の食事は漬物とご飯だけ。食べ物には、カロリー源というか身体を動かす燃料という側面があるけれど、「低所得」層においては、その燃料としての意味が前面化してくるということだろう。そして、飢饉という状況においては、その燃料としての炭水化物や脂肪を腹一杯摂取することも贅沢だということになるのだが。まあ、昔から貧乏くさいというかけち臭い食事というのは、如何に少ないおかずで多くのご飯を食わせるのかというコスト・パフォーマンスを競っていたということはあるので、今回の調査も、少なからぬ人は常識の再確認という感じで受け止めたのではないか。
低所得者の方が「肉」の摂取が少ないということだけど、「肉」の内容についてはどうなのだろうか。よく、或る程度豊かになるとみんな脂肪の少ない赤身を求めるようになるという。所得と比例して赤身を求める傾向が強くなっているのだろうか。日本では、その一般的な傾向に逆行するかのように、大トロとか霜降りの牛肉が高級食材として好まれているということはある。
さて、『読売新聞』の記事;
「所得が低い人ほど」「喫煙率が高」くなるというのは、世界的にはそうなのだろう。日本でも以前からそういう傾向は出ていたのだろうか。「肥満者」が多いというのは、上でいうところの炭水化物に偏った食事ということと関係があるのだろう。貧困と肥満の関係については、米国の話だけれど、小山エミさんの「肥満増加の裏にある米国の農業政策と階級格差」*3とかがある。
所得低いほど高い喫煙率、歯少なく肥満者多い
2015年12月14日 11時56分
世帯の所得が低い人ほど、健康診断を受けない割合や喫煙率が高いなど、健康作りに積極的ではないとする国民健康・栄養調査の結果を厚生労働省が発表した。
厚労省は、低所得層は健康管理を意識する余裕がないことが背景にあると分析、生活習慣の改善を後押ししていく考えだ。
調査は、昨年11月に全国の5432世帯を対象に実施。回答のあった3648世帯を、世帯所得別に200万円未満の低所得層、200万円以上600万円未満の中所得層、600万円以上の高所得層の3群に分け、生活習慣を分析した。
低所得層では健診を未受診の人の割合が男性で42%、女性で40%と、高所得層のそれぞれ16%、30%よりも高かった。習慣的に喫煙する人の割合も男性で35%、女性で15%と、高所得層のそれぞれ29%、5%を上回った。さらに歯が20本未満の人や肥満者の割合も、低所得層は男女ともに高い傾向があった。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20151214-OYT1T50013.html
さらに話は身も蓋もなくなるのだろうけど、所得と平均寿命の相関関係についての調査というのはあるのだろうか。(また米国の話だが)ジョセフ・スティグリッツ*4の”Inequality is now killing middle America”はそれを問題にしている*5 。
*1:See コンタケ「厚労省の「所得が低い人は栄養バランスのよい食事をとる余裕がない」「健康への関心を高めて」発言が「貧困層あおってるのか」と話題に」http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1512/14/news076.html 「「低所得者は食事を見直して」 厚労省のコメントが、"現代のマリー・アントワネット"との声も」http://www.huffingtonpost.jp/2015/12/14/japan-health-marie_n_8802310.html
*2:https://twitter.com/KRTsan30/status/675881032386674688
*3:http://macska.org/article/196 Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070820/1187612830
*4:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071011/1192121439 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080126/1201358249 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080410/1207758032 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090323/1237832980 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091029/1256834918 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091106/1257528010 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130413/1365834968 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130417/1366199205 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131201/1385861081 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140926/1411697403 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141008/1412738597
*5:http://www.theguardian.com/business/2015/dec/08/inequality-is-now-killing-middle-america-joseph-stiglitz