『錯乱的瞬間』(李暉)

数日前に衡山坊のArario Gallery*1で、 李暉*2の個展『錯乱的瞬間(Instant Insanity)』を観た。展示されたインスタレーションの多くは、素材にぴかぴかのステンレスを使用しており、何か異物が突き刺さって、亀裂が走って、これまでの均衡が失効し、カオスが噴出しようとする瞬間を表現している。そのため、観衆も作品に同化しようとするなら、炸裂の予感が感染し、驚愕と痛みを感じざるを得なくなる。ただ、「不確定的真相(Dissociative Triuth)」という作品はちょっと趣が違った。これは光沢のあるステンレスを使用していないが、表現しているのはほかの作品よりも〈以前〉のこと。内部の緊張を徐々に昂進させながら「錯乱的瞬間」を待つ、という感じだろうか。